2014 Fiscal Year Research-status Report
菅原精造が初めて伝えた日本漆芸が近代のフランス美術に及ぼした影響の位置づけ
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25370143
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
川上 比奈子 摂南大学, 理工学部, 教授 (90535121)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 菅原精造 / アイリーン・グレイ / ジャン・デュナン / 日本漆芸 / アール・デコ / キュビズム / 屏風 / E.1027 |
Outline of Annual Research Achievements |
20世紀初頭、アール・デコの作家として有名なアイリーン・グレイやジャン・デュナンに初めて日本漆芸を教え、作品を共につくったことでフランスの美術に多大な影響を与えた菅原精造が、フランスの近代美術にどのような影響を与えたかを位置づけるために、2014年9月、イギリス、アイルランドへ赴いた。 まず、アイリーン・グレイの漆芸作品が多く収蔵されているヴィクトリア・アンド・アルバート美術館に赴き、その作品を調査した。さらに、アイルランドの国立博物館に赴き、アイリーン・グレイが菅原を通じて購入していた漆、道具などを調査した。また、グレイが菅原に出会うきっかけとなった可能性のあるロンドンのソーホー地区を調査した。 日本においては、山形県の酒田市資料館において、菅原の後に東京美術学校に入学し、辻村松華に師事した漆芸家の資料を収集した。また、菅原が漆芸を初めてまなぶきっかけとなった学校および創設者について調査し、さまざまな事実が明らかになってきた。 年間を通じて、海外の論文を調査しつつ、上、調査内容を論文化し、また、英語及びフランス語に翻訳を依頼して、関係機関、研究者に発信する準備が整った。 前年度、菅原とグレイの作品を比較研究した結果、明らかになってきたことに加え、当時の時間概念を空間化した美術思潮のキュビズムが菅原精造にも大きな影響を与えていることがわかった。また、グレイがE.1027で太陽の動きを重視する理念に、菅原から知り得た日本の自然観が関係する可能性があることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、菅原精造がフランスの近代美術に与えた影響を位置づけるために、フランスおよび日本の各地へ赴いて調査した結果、重要なデータを収集することができた。前年度のデータに加えて、まとめ直し、論文にまとめつつある。さらには、これまでの論文を英語およびフランス語に翻訳し、関係機関、研究者に送付しようとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度、26年度の海外調査で得た知見をもとに論文を執筆する。また、国内調査で明らかになった事項の詳細をさらに探るため、東京、新潟、山形において資料、作品を再調査する。
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Causes of Carryover |
国内外各地の調査を行った結果、当初予定より貴重な資料、史料を多く得ることができたため、その整理、および分析に専念したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度の支出予定の各費目を、27年度に持ち越し使用する。
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