2015 Fiscal Year Annual Research Report
菅原精造が初めて伝えた日本漆芸が近代のフランス美術に及ぼした影響の位置づけ
Project/Area Number |
25370143
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
川上 比奈子 摂南大学, 理工学部, 教授 (90535121)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 菅原精造 / アイリーン・グレイ / ジャン・デュナン / Inagaki / Ousouda / 日本漆芸 / アール・デコ / 青光粉 |
Outline of Annual Research Achievements |
20世紀初頭、アール・デコの作家として有名なアイリーン・グレイやジャン・デュナンにはじめて日本漆芸を教え、共に作品をつくった菅原精造が、どのような背景でフランス美術に影響を与えたかを明かにするために、国内外を調査した。 26年度までに、菅原が山形県酒田市の済世学校で漆芸技術を身につけたこと、学校の創設者の理念と教育状況、東京美術学校の入学・在学状況など菅原の漆芸修業に関する重要な事実を明らかにした。また、イギリス、フランスに赴き、グレイとデュナンの漆塗り作品を調査し比較研究を行った。さらにグレイの住宅E.1027のデザインにおいて、菅原の影響からの日本的な要素とキュビズムと融合し独自的なものとなった可能性を明らかにした。 27年度は、アイルランド国立博物館のグレイに関する収蔵品の中に漆芸に使用する顔料「青光粉」があり、国内を調査した結果、福島県喜多方の漆器工人によることが判明した。菅原がグレイやデュナンのために、日本各地から漆芸作品の制作材料を入手していたことが分かった。また、研究協力者の熱田充克の協力を得て調査した結果、グレイの工房において菅原を手伝ったとされるOusouda は、渡英してからフランスに渡った日本人画家であることが判明した。また、Inagakiは稲垣吉蔵であり、1922年、空間すべてを漆塗りで仕上げたグレイのアパルトマン改装において菅原とともに制作し、Ousoudaは少なくとも1929年まではグレイの工房で漆塗りの仕事をしたことから、菅原がほかの日本人芸術家と連携して、フランスのアール・デコを代表する作品群を生み出していた事が分かった。 年間を通じて、国内外の研究者からの質問に対応し、上記の調査内容を論文化し発信する準備が整った。今後、まず7月の関係学会において上記の成果を講演し、さらに菅原と日本人芸術家の協働が欧州美術に与えた影響を広く探る予定である。
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