2014 Fiscal Year Research-status Report
ベルリン工芸博物館開館時の展示方法一考-源泉としてのジオラマとグロピウス一族
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25370201
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Research Institution | The National Museum of Modern Art,Kyoto |
Principal Investigator |
池田 祐子 独立行政法人国立美術館京都国立近代美術館, 学芸課, 主任研究員 (50270492)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グロピウス / ベルリン / 工芸博物館 / ジオラマ / シンケル |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、まず、昨年度の主たる調査対象であった画家カール・ヴィルヘルム・グロピウスに関する追加研究を行った。とくに、カール・ヴィルヘルム・グロピウスが手がけたジオラマについて、その具体的な形態と当時の受容状況をめぐり、同時代の文献(例:S. H. Spiker. Berlin und seine Umgebungen im neunzehnten Jahrhundert, Verlag Georg Gropius, Berlin 1833)や、当時のジオラマ興業のビラなどを調査した。その結果、グロピウスのジオラマでは、視覚装置としてのジオラマ上映が行われていただけではなく、美術・工芸品の展示即売やジオラマ画の制作者育成なども行われた総合的な芸術産業施設であったことが判明した。 そのカール・ヴィルヘルム・グロピウスの歳の離れた従兄弟にあたるのが、建築家マルティン・グロピウスであり、当該年度では、この人物の基本調査を行った。本研究での主たる対象は、マルティン・グロピウス設計のベルリン工芸博物館であるが、まずはこの建物の彼の全業績における位置づけを探るため、ベルリンの美術図書館などで基礎文献や資料を収集・調査した。更に、研究計画では平成27年度の調査対象であった、ベルリン工芸博物館の設立時からマルティン・グロピウス設計の建物完成まで臨時で使用された建物とその利用状況に関する情報を、当時の新聞などの文献から収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カール・ヴィルヘルム・グロピウス自身と彼が設立したジオラマについては、本年度の追加調査によって、より具体的な情報を得ることができた。また、それによって、彼の従兄弟であるマルティン・グロピウスの業績(特にベルリン工芸博物館設立時の副理事長ならびに博物館建物の設計者としての)との連続性を、より確実に証明することが可能となった。また、ベルリン工芸博物館設立時から臨時に使用された建物とその利用状況を調査することで、マルティン・グロピウスが、従兄弟カールの業績を踏まえて仕事をしていたことが明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
マルティン・グロピウスによるベルリン工芸博物館設計主旨を調査・研究をするためには、それまで臨時に博物館建物として使用されていたものとその状況を調査する必要が出てきたため、研究計画の二年次と三年次の研究順序を若干入れ換える必要が生じた。そのため、今後は、二年次に調査予定であった、マルティン・グロピウスのベルリン工芸博物館設計主旨に重点をおき、なかでも建物内外の装飾プログラムと作品の展示環境の変遷について、調査・研究を進めることにする。また調査過程で、1890年代後半に、工芸・デザイン作品の展示方法について、ベルリン工芸博物館長ユリウス・レッシングとベルリン博物館群総館長ヴィルヘルム・フォン・ボーデの間で激しい論争があったことがわかったので、それについても追加調査を行いたい。
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Causes of Carryover |
列車チケットのネットによる事前取得などにより、旅費(海外)における交通費が予定より僅かながら少なくてすんだことと、取得必要な資料(書籍)が当該年度内にみつからなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな資料購入費ないし資料複写費に充当する予定。
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Research Products
(3 results)