2013 Fiscal Year Research-status Report
ポピュラーメディアにおけるシェイクスピアの言及と消費に関する研究
Project/Area Number |
25370307
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shirayuri College |
Principal Investigator |
南 隆太 白百合女子大学, 文学部, 教授 (60247575)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シェイクスピア / ポピュラーカルチャー / 翻案 / 英文学 |
Research Abstract |
日本のポピュラーカルチャーにおけるシェイクスピアの領有の在り方について、シェイクスピアの一部分(セリフやイメージ)のポピュラーメディアにおける使用・流用について研究を行うほか、舞台とポピュラーカルチャーの想像力との関係も論じ、広く海外研究者の批評を求め、高い評価を得た。 2013年5月10・11日に開催されたイタリア・フェラーラでの国際学会Shakespeare in Tatters: Referencing Shakespeare on Film and Televisionに出席し、10日にSignificances of Shakespearean Fragments:Referring to Shakespeare in Japanese TV Animation Filmsを発表し、Mariangela Tempera教授と意見交換。 11月1・2日にはソウル大学で開催された韓国シェイクスピア協会(Shakespeare Association of Korea)の国際学会の2日に講演"Shakespeares Fragmented in Global Pop Culture:Shakespeare Re-imagined in Japanese Anime Culture"を行った。 12月5・6日にフィリピン・マニラで開催された国際学会Shakespeare in Asia, Manila 2013においてFrivolity, thy Name is Shakespeare? Questioning the Imagined/Established Cultural Status of Shakespeare on Today’s Japanese Stageを発表。 2014年月1月9-14日に台湾の共同研究者Yilin Chen氏を招聘し、研究会で講演依頼。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.これまでの研究成果について、当初予定していた以上に研究に関わる人的ネットワークを確立することができ、ポピュラーカルチャーの分析に関する理論的な面についての助言を受けることができた。 2.日本においてはシェイクスピアをマンガに翻案している実作者より研究について関心を持っていただいたことで、研究内容について、現在のところは受け手の視点のみからの議論が中心になっているが、製作者の視点やいわゆるアニメやマンガのファンの反応についても詳細な情報を得ることができている。さらに研究ネットワークの広がりにより、個人では把握できない広範なポピュラーメディアにおけるシェイクスピアの流通に関する情報を入手できた。 3.国際学会での発表や講演を聞いたイタリア、韓国、フィリピンの研究者や学生より、日本のポピュラーカルチャーがローカルなレベルでどのように消費されているのか、そこでシェイクスピアがどのように関わっているのかについて具体的なことをまなぶことができた。とくにインターネット上に流通する作品については、いわゆるfansubと言われるサイト関連の情報を得ることができた。 4.3との関連で、日本のオタク研究と併せて英語圏におけるfandomに関する研究状況を把握することにより、アニメやマンガ、TV番組のファンによる2次、3次創作におけるシェイクスピアの流通という問題にも目を向けることができるようになり、研究内容に広がりが出てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、本研究2年目であり、最終年度に開催を予定している国際集会に向けて具体的な準備と研究資料の拡充を行う年である。 1.国際学会における日本のポピュラーカルチャーにおけるシェイクスピアへの関心が、具体的にどのように受け入れられているのかを調査し、同じ作品が日本とアジア、さらにヨーロッパでの授業の差異について検討をする。 2.英語圏におけるfandom研究を日本におけるオタク研究と比較をしながら、シェイクスピアの二次・三次創作における利用の在り方を調査研究することで、日本のポピュラーな想像力によってつくられたシェイクスピアの独自性と普遍性を検討する。 3.ポピュラーカルチャーとシェイクスピアについて重要な研究を行っている海外の研究者を日本に招聘し、小規模ながら研究集会を開催し、研究成果への評価と研究に関する意見交換を行う。具体的には、英国Nottingham大学のJulie Sanders教授、イタリアFerrara大学のMariangela Tempera教授、フィリピンのPhilippines大学のJudy Ick教授を招いて研究成果について批判的な見直しを行う。 4.ポピュラーカルチャーの想像力がシェイクスピアの舞台作品にどのように影響を与えているのかを、具体的な作品を取り上げて検証し研究を行うことで、これまで議論されることがなかったアニメやマンガ、テレビ番組と舞台作品との相互影響関係について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 当初科学研究費補助金によって学会参加を予定していたイタリア・Ferrara Univ.での国際学会と台湾に代わってフィリピン・Univ. of Philippinesで開催について、それぞれの学会主催者より招聘を受けることができ、渡航・宿泊費用を負担したくてもよくなったため。 2.研究計画では、フランス・モンペリエでESRA(European Shakespeare Research Association)主催により開催される学会セミナー"Local and Global Myths in Shakespearean Performance"に出席予定であったが、体調不良により出席を取りやめることとなり、費用を使用しなかったため。(セミナーで発表予定であった "De-styling Shakespeare: Questioning the Imagined/Established Cultural Status of Shakespeare on Today’s Japanese Stage"は学会論文集に収録予定) 今年度の海外研究者の招聘にあたり、2015年度に慫慂を予定していた海外の研究者を研究集会に招聘し、研究成果についての議論を深め、意見交換を行う。また、ポピュラーメディアで流通するシェイクスピア作品について、DVDなどの一次資料収集を行うと同時に、資料のデジタル化を進めるために、専用の機材を購入する。 フランスで2014年4月21-27日行われた国際学会Shakespeare 450で主催するパネルにおいて研究発表を行うほか、パネルの講演者として実作者を招聘する。さらに5月15-18日に国立台湾大学で開催されるAsia Shakespeare Association主催の第1回国際学会Shakespearean Journeys: The Inaugural Conference of the Asian Shakespeare Associationでの研究発表を行う。
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