2015 Fiscal Year Research-status Report
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25370317
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
武井 暁子 中京大学, 国際教養学部, 教授 (00403634)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 産業革命 / ヴィクトリア朝 / 植民地 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の第一の研究実績は、共編著『土着と近代―グローカルの大洋を行く英語圏文学』(音羽書房鶴見書店)の出版である。同書において、グレアム・グリーン『事件の核心』の植民地におけるイギリス人コミュニティの閉鎖性をコミュニティ構成員の相互監視、ゴシップによる法律の空洞化と私刑を論じた。同書は平成27年度科学研究費補助金研究成果公開促進費(学術図書刊行、課題番号15HP5048)の助成を受けた。 第二に、2015.7.10にカナダで開催されたDickens Societyカンファレンスで研究発表を行った。概要は、ディケンズ作品の中で飲酒は階級を問わず最大の楽しみであること、男性にとって、自前で飲酒できることが大人の仲間入りであること、一方、女性の飲酒は概ね否定的に書かれていること、初期のディケンズ作品では大酒やどんちゃん騒ぎがユーモラスに描かれているが、中期と後期作品ではアルコール依存症や飲酒に起因する家庭内暴力など飲酒のネガティブな副産物が描かれるようになり、ヴィクトリア朝の飲酒への意識の変化を反映している、というものだ。 第三に2016.1.12に145h Hawaii International Conference on Arts and Humanitiesで研究発表を行った。概要は、ビアトリクス・ポターは裕福ではあるが、両親の支配下に置かれ、自由を極度に制限されたが、The Tale of Peter Rabbit(1902)が成功して、ウィンダミアにヒルトップ農場を購入してから、自立した女性に変貌し、ポターの自信の表れはミセス・ラビット、ティギー・ウィンクル、サリー・ヘニーペニーといった女性商店主に投影されていると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
産業革命による近代化が進み、政治、経済が安定し、文化が成熟するに従って、イギリス国民のアイデンティティの形成ができたことを検証した結果、都市形成やヨーロッパの他都市との比較にまで研究対象が広がり、さらに、ヴィクトリア朝末期まで研究対象に網羅することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度はまず第一に鉄道の発達に関する一次資料の検索と蓄積を行う。これに関しては、可能な限り、『パンチ』、『ロンドン・イラストレイティッド・ニューズ』などの一次資料を読み、鉄道が当時工業化・都市化の進展に果たした役割を考察する。 第二に、ヴィクトリア朝の都市化と不即不離である都市形成について考察し、ロンドンだけでなく、マンチェスター、リヴァプールなどの地方都市でも、人が集まり、富が蓄積されるに従って、タウンホール、図書館、美術館、劇場などの公共施設が建設され、街の繁栄にふさわしい建築デザインが採用され、イギリス国民のアイデンティティの形成に寄与したプロセスを検証する。ヨーロッパの都市形成との比較も行う。 第三に、産業革命が終結し、文化的に爛熟したヴィクトリア朝末期のイギリスの文化風土について論考する。これについては、2016.7.11にレイキャビクで開催されるDickkens Societyカンファレンスで行う研究発表において漱石の目から見たヴィクトリア朝末期のロンドンについて論じる。
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Research Products
(7 results)