2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Industrial Revolution and Victorian Literature
Project/Area Number |
25370317
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
武井 暁子 中京大学, 国際教養学部, 教授 (00403634)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イギリス文学 / 18世紀 / 19世紀 / ヴィクトリア朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の第一の研究実績は、1月に行った学会発表に加筆した論文刊行である。概要は、ビアトリクス・ポターは中産階級の裕福な家庭に生まれたが、過干渉な両親の支配下に置かれ、成人してからも両親の意向が常に優先されたこと、作家になる前に菌類の研究をしたが、女性であるという理由で学会参加が認められないなど、因習と制約に縛られていた。しかし、The Tale of Peter Rabbit(1902)出版が成功して、ウィンダミアにヒルトップ農場を購入してから、自立した女性に変貌した。ポターの変貌はミセス・ラビット、ティギー・ウィンクル、サリー・ヘニーペニーといった女性商店主に投影されていると結論した。 第二に、2016.7.11にDickens Societyカンファレンスで研究発表を行った。概要は、漱石がイギリス留学した1900-02年は日本はまだ後進国であり、一方、イギリスは未曽有の発展を遂げていた一等国であったため、抜きがたい劣等感が漱石の留学生活をストレスが多いものにしたこと、その中で、漱石は神経衰弱に悩まされながらもイギリス文学を研究し、薬籠中のものにしたこと、『坊っちゃん』『三四郎』に見られるディケンズ作品との人物創造、プロットの類似は留学生活の成果である。 第三に2017.3.30にSanditon: 200 Yearsで研究発表を行った。概要は、この作品が書かれた19世紀初頭は海岸保養地の開発が進み、中でも南東イングランドは過当競争時代に入っていたこと、タイトルのSanditonは”a sandy town”であり、Sanditonの開発は失敗に終わることが予測されること、オースティンは旅行ブーム、同時代の中産階級の娯楽熱、目まぐるしく変わる流行の健康法に批判的なスタンスであったことを論じ、ヴィクトリア朝中産階級の旅行ブームの先駆けとなっていることを論じた。
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