2013 Fiscal Year Research-status Report
19-20世紀転換期にみる消費文化と下層中産階級の表象
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25370331
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
三宅 敦子 西南学院大学, 文学部, 准教授 (10368970)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 19世紀 / イギリス / 広告 / 文化史 / 英文学 |
Research Abstract |
本年度は以下の研究に着手した。 (1)まずH.G.ウェルズの研究に着手した。手始めに小説_Tono-Bungay_の分析を開始した。並行してウェルズの伝記に関する書籍を購入し伝記的背景についての知識を深めた。 (2)世紀転換期の買い物事情について情報を収集した。まずはこの時期を対象とした小売業および買い物文化一般についての研究書を読み、基本的な知識を深めた。 (3)小説_Tono-Bungay_が扱うのが誇大広告で販売力を高めた特許薬であり、当時の小売では薬品と食品に関して偽装が大問題だったため、薬品関係のみならず19世紀末の食品小売業についても研究の幅を広げた。英国の大手スーパーチェーンSainbury'sに関する資料を保存しているロンドンのThe Sainsbury's Archiveに出かけ、社史と19世紀の広告についてリサーチを行った。Sainbury'sはもともとは乳製品の小売業を営んでいたため新鮮なバターが売りだった。そこで1900年にロンドンで新店舗を開店した際には、ガラスのボールに入ったバターを開店記念として客に配布したり、他にも記念コインを配布するなど、今日同様、来店客へのプレゼントという形で宣伝広報活動を行っていたことが判明した。 (4)ロンドンの大英図書館に出向き、Oxford大学Bodleian Libraryに保管されている18世以来の広告のデジタルオンラインデータ―ベースJohn Johnson Collectionで広告の種類およびデザインや文言についてリサーチをした。Collectionに保存済みの広告にはココアの広告が数多く保存されていた。時代が下るにつれ文字量が減り流行のスポーツなどの挿絵とともに宣伝されていた。ココアの広告に関してはpureであることが強調されており、広告を読み解くことで当時の食品医薬品販売に関する人々の問題意識が窺える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
小説を対象とした研究に関しては、長年の経験からおおよそどこを探せばどんな資料が出てくるのか見当がつくのだが、広告や19世紀の小売業についての文化史的研究に関しては未経験の上、まとまった形では情報が存在していないため、まず全般的な研究書をめくり基本的な知識を得た後で一次資料についての情報(どのような資料があるのか、またどこに保管されているのかなど)を探さなければならず、この作業に手間取ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定よりも文化的背景の研究に時間を取られたので、来年度以降は文化的背景の研究対象を絞りこむことで、小説本体の研究により多くの時間をさけるように工夫したい。 広告の分析は当初の予定では比較的数多く保存されているエンターテイメント(大衆娯楽)の広告も含める予定であったが、小説のテーマと関連する小売業に絞って研究を進めることにしたい。 逆に陶器など日常生活で使用するような道具の蒐集活動が世紀転換期には消費活動と重なってくるということが判明したので、こちらを研究テーマに加えたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)ロンドンでのリサーチが夏休み期間に実施できず、3月に実施したため当初予算に計上していた文献複写代などが次年度の支払いに回ってしまった。 (2)研究成果発表のための英文校正費を謝金等として計上していたが、本研究テーマを発表することが可能な学会が今年度は開催されず、研究も先に述べた事情から進捗が遅れたため成果発表のために計上していた予算が消化できなかったため。 (1)3月のリサーチで生じた文献複写代の支払いに充てる。 (2)2014年度10月にアメリカの学会で発表することが決定したので、昨年度使用する予定だった英文校正費などはこの学会発表準備で使用する。 (3)History of Advertising Trustという研究所に研究対象時代の広告が保管されていることが判明し、さらにここでは有料のリサーチ代行サービスを行っていることが判明したので、研究を効率化するためにこのサービスを利用しその支払いに充てたい。
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