2014 Fiscal Year Research-status Report
「文芸の共和国」としてのプランタン=モレトゥス工房の総合的研究―第三期
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25370368
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
宮下 志朗 放送大学, 教養学部, 教授 (60108115)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ルネサンス文学・思想 / ユマニスム(イタリア、フランス、ベルギー) / モンテーニュ / 古典の翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度も、モンテーニュなど、フランスのユマニストとの関係を意識しながら、ユストゥス・リプシウスの書簡集を繙読するなどの地道な作業を継続している。そして、その成果を盛りこむかたちで、モンテーニュ『エセー6』(白水社)を刊行することができた。巻末には、『エセー』に添えられた「特認」(「允許状」と訳されることもある)の更新事情について具体的に調査した論文を載せてある。「特認」を調べると、『エセー』のようなロングセラーに関しては、たとえば最初の「8年間」という期間が切れても、増補版を出し、その後は、さらに索引や伝記といったパラテクストを加えて「特認」を引き延ばしていくという戦略がはっきりと見てとれて、このことは従来ほとんど注目されてこなかった事実として、価値があると考える。もうひとつ、フランス・ルネサンス研究者10数名の力を結集した、宮下志朗・伊藤進・平野隆文編『フランス・ルネサンス文学集1』(白水社)も、ようやく刊行にこぎつけたが、編者の一人平野の死去という悲しい出来事を伴った。 なお、アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のモンテーニュ』(白水社)は、1595年版『エセー』を底本としているため、日本語訳でも拙訳『エセー』が使用された。こうして今後は、1595年版『エセー』も、より強力な市民権を獲得していくと思われる。 また、6月には、、ペトラルカ、ボッカッチョ、マキァヴェッリ関連の実地調査を行うことができたので、いずれその成果を発表したいと考えているが、その一部はすでに、実地調査以前に「ルネサンスと新生――ペトラルカとボッカッチョの書物愛と友情」(高桑和巳編『生命の教養学X、新生』慶応大学出版会)として発表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究は、1クリストフ・プランタンと周辺のユマニストたち、2モンテーニュの『エセー』の研究と翻訳、 という2つの柱からなっている。2については、1の成果も活かしながら、順調に進捗していると考えている。 しかしながら、プランタンの未刊行日記に関しては、一部の解読は進めているが、内容が、もっぱら書店経営に関連する、かなりのところ「会計」的なものであることが判明したため、正直言って、当初の期待を満たしてくれるテクストではなかったのである。そうした意味において、「おおむね順調」としか評価し得ないのが、正直なところである。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、大きな目標であるところの、『エセー』の翻訳を、本研究の価値ある副産物として、是非とも研究年度内に完成させたい。同時に、これも本研究と連動する『フランス・ルネサンス文学集』全3巻(白水社)だが、第1巻を上梓したものの、編者の一人平野隆文の死去という不幸に見舞われてしまった。さいわい彼の訳稿はできているので、残りの編者(宮下志朗と伊藤進)で力を合わせて、全巻の刊行へと導きたい。そして、余力があれば、プランタン=モレトゥスについての著作に着手するつもりである。
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Research Products
(5 results)