2013 Fiscal Year Research-status Report
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25370380
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 浩司 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (80267442)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 国際情報交換 / ドイツ文学 / ポストメモリー / ポップ文学 / オトフィクシオン / 移民文学 / 家族小説 |
Research Abstract |
まずは21世紀のドイツ小説の特徴をつかむために、隔月で研究会を開催した。なかでも注目される作家としてポップ文学の騎手ヤン・ブラント、虚構的自伝(オトフィクシオン)の名手フェリシタス・ホッペ、そして移民文学に新風を吹き込むシビュレ・レヴィッチャロフとアンナ・キムらの小説を取りあげ、担当者を決めて発表報告と集中討議を行った。ドイツで生まれ育った移民二世の文学作品を例として、文体や作品構成の独自性やユーモアや諷刺などの新しい処理の仕方に注目しながら、先行世代の移民文学との違いが大きな焦点となった。 さらに同時代文学に関するドイツにおける先行研究を批判的に受容するために、空襲小説やアルツハイマー小説などについて論じるウルリーケ・フェッダー (フンボルト大学)、ポップ小説の大家モーリッツ・バスラー(ミュンスター大学)、同時代文学における虚構と現実の枠を問うウーヴェ・ヴィルト(ジーゲン大学)、自伝の虚構性を論じるマルティナ・ヴァーグナー=エーゲルハーフ(ミュンスター大学)らの研究書を参照することで、問題意識を深めることができた。 成果発表としては、年二回開催のドイツ現代文学ゼミナールで研究協力者複数名が口頭発表をした。研究代表者は4月にパリ・ソルボンヌ大学主催の「ヨーゼフ・ヴィンクラー=シンポジウム」で彼の旅行記のもつオトフィクシオン性について口頭発表した。9月にはベルリンに研究出張をしてウルリーケ・フェッダー教授と研究打ち合わせを行い、3月には同氏を招聘して開催した日本独文学会第56回文化ゼミナールの開催責任者を務めて、国際研究者交流を推進した。 研究成果としてはさらに、研究代表者が編纂した『ゼロ年代の小説 記憶の歴史化と今をつかめ』(日本独文学会研究叢書93)を刊行した。同書には連携研究者のほか、研究協力者が複数寄稿した。これによって研究成果をひろく社会に還元することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに定期的に研究会を開催して、研究目的の達成のために新しい作品を読み込みながら論議することで問題意識を深めることができた。そうしたなかで、研究目的に謳った「国際研究者交流」が、当初計画以上に大きく進展したのが大きな収穫であったといえるだろう。 研究代表者が参加した4月のフランス、ソルボンヌ大学(パリ)のベルナール・バヌウン教授主催のヴィンクラー=シンポジウムのほか、10月にはオーストリア大使館文化フォーラムの協力を得て、作家アンナ・キムを早稲田大学に招聘して3時間におよぶワークショップを開催することができた。移民二世作家の状況について直接作家と意見交換できたのは大きな収穫であった。 10月には中国北京の対外経済貿易大学(ファン・シャワー教授主催)で開催されたフンボルト財団のコレークで旧東ドイツの壁崩壊以降の文学について口頭発表を行い、フンボルト大学(ベルリン)のラルフ・クラウスニッツァー教授らと意見交換できた。2月にヴュルツブルク大学で予定されていたヘルタ・ミュラーについての国際シンポジウムは主催者側の都合で延期になったことが惜しまれるが、3月にはドイツ学術交流会と日本独文学会が共催する7日間の文化ゼミナールに研究代表者、連携研究者、研究協力者が参加して、同じくフンボルト大学のフェッダー教授とともに、「死者たちの後生」というテーマで様々な理論的、文学的テキストを俎上に載せて集中討議を行うことができた。現代文学ではエルフリーデ・イェリネク、ジェニー・エルペンベック、アルノー・ガイガーらを取り上げることができた。 以上のような理由から国際交流と国際発信については計画以上の成果があったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もこれまで通り隔月で研究会を継続するとともに、国内学会や国際学会での口頭発表や日独両語による論文発表の形で研究の成果を広く世に問うていきたい。 研究代表者は、5月にロストックでの国際学会でウーヴェ・ヨーンゾンの代表作『ヤーコプについての推測』の日本での受容について、ウルリッヒ・ペルツァーらの同時代作家による受容も踏まえながら口頭発表する予定となっている。11月にはゲーテ・インスティトゥート東京の協力を得て、思想的な経済小説の書き手としてゼロ年代の代表的な作家として注目されるエルンスト=ヴィルヘルム・ヘンドラーを招いて、ワークショップを早稲田大学で、朗読会を東京ゲーテ・インスティトゥートで開催する。さらに東京大学と九州大学からロマン派研究とアドルノ研究の第一人者を招いてシンポジウムを開催することになっている。さらに来年2月にはヴュルツブルク大学で開催予定のヘルタ・ミュラー=シンポジウムに招聘されており、国内外の研究者との切磋琢磨によって研究の質を高めるつもりである。
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Research Products
(10 results)