2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370380
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 浩司 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (80267442)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 戦後文学 / 21世紀文学 / オーストリア文学 / オートフィクション性 / 国際学術交流 / 現代詩 / リアリズム / ポップ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も21世紀のドイツ小説の特徴をつかむために、レオポルト・シュレンドルフ訪問講師(慶応大学)と共同で大学院生やポスドクをメンバーとして定期的に研究会を開催した。本年度は計画通り、いわゆる戦後文学との差別化に重点を置き、ポップ文学の新風を吹き込んだクリスティアン・クラハト、SFやポルノなど通俗性を取り込むクレメンス・J・ゼッツら若手中堅のほか、ヴァルター・カッパハー、ペーター・ハントケ、エーリヒ・フリート、コンラート・バイアーなどオーストリアの作家を中心に選書し、担当者を決めて発表と集中討議を行った。リアリズム偏重のドイツ文学の本流とは一味違ったオーストリア文学のなかに21世紀文学に通じる遊戯性などが読み取れた。 ゲーテインスティチュートとの連携も強め、招聘作家の朗読会で司会を務めたり、ワークショップを共催したりして、同時代作家や批評家たちとの意見交換をはかった(J・ロトマン、W・パテルノ、J.ゼッツ)。 ドイツの研究者との学術交流も強化し、2015年6月にはロストック大学でウーヴェ・ヨーンゾンとドイツ現代文学に関するワークショップを、10月には早稲田大学にロストックの研究者を招いて第二回ワークショップを開催した。2016年3月にはトリーア大学とのワークショップ(早稲田大学)に参加し、ドイツ現代詩人による俳句の実践について研究発表した。 このほかの成果発表として研究代表者は、5月にウィーン文芸協会で日本における現代オーストリア文学の受容について招聘講演をし、8月に開催された国際ゲルマ二スト会議(上海)でヘルタ・ミュラー、9月にフンボルトフォーラム(北京)でグリュンバイン、10月の日本独文学会(鹿児島)でランゲ=ミュラーについて口頭発表した。 論文として、アイヒンガーとヘルタ・ミュラーを論じた独文論文とヴィンクラーのオートフィクションを論じた独文論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
同時代文学作品を隔月で読みこなす一方で、20世紀ドイツ文学のリアリズム偏重傾向との差別化を図るために、主としてオーストリアの言語遊戯性を重視した文学傾向の発掘することに務めた。この点では当初計画通りに研究課題は間違いなく進捗している。 当初の計画以上に進展していると判断した理由は、当初計画で謳った国際学術交流の推進が想定以上に進んだからである。5月にウィーンで招聘講演、6月にロストックでワークショップ、8月に上海で国際学会、9月に北京で招聘基調講演、10月にロストック大学ヘルビッヒ教授を招いて国際シンポジウム、11月で台湾で招聘講演、12月にギリシアで国際学会、3月に東京で国際ワークショップがあって、内外の研究者に対して研究成果を示すことができた。発表後の質疑応答やレセプションでのディスカッションによって、問題意識を拡大することができたのが大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も隔月での研究会を開催する。今年度第1回は4月9日(土)に早稲田大学にて、クリスタ・ヴォルフの『幼年期の構図』を取り上げる。これは21世紀になって注目を浴びるオートフィクション性に関わる重要テキストで、この研究会の成果を踏まえて、5月29日(日)の日本独文学会春季研究発表会でのドイツ語によるシンポジウムで「女性作家のオートフィクション」についてフェリシタス・ホッペと比較しながら口頭発表する。このシンポジウムには上海外国語大学からヤン・ジン准教授を本研究プロジェクトによって招聘するが、26日(木)にも早稲田大学で現代文学と建築についてのワークショップを開催する。 6月上旬にはウーヴェ・ヨーンゾン協会の研究発表会に出て、現代文学の専門家たちと意見交換し、8月にはアジアゲルマニスト会議でグリュンバインとゴミ美学について研究発表することが決まっている。11月にはゲーテインスティチュートと共同でドイツから詩人を招いてワークショップを開催する予定である。
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Research Products
(12 results)