2014 Fiscal Year Research-status Report
想起する帝国―ナチス・ドイツにおいて想起された「過去」の研究
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25370388
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
溝井 裕一 関西大学, 文学部, 准教授 (60551322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細川 裕史 阪南大学, 経済学部, 専任講師 (60637370)
齊藤 公輔 中京大学, 国際教養学部, 准教授 (90532648)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 集合的記憶 / ナチス / 国家社会主義 / コーパス / メディア / 媒体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26度は、従来の予定どおり、ドイツおよび周辺国で収集した資料をもとに、第三帝国における「集合的記憶」のあり方に関する調査を進めた。 A.研究代表者(溝井裕一)は、ベルリン動物園長ルッツ・ヘックのもとで「復元」された動物が、いずれも前キリスト教時代の「古代民族」の崇拝対象となっていたことや、「国民的叙事詩」といわれた『ニーベルンゲンの歌』に登場する点に注目した。そして、復元計画が政治的に歪められた「ゲルマン世界」の復興と密接にかかわっていたことを考察している。 B.研究分担者(細川裕史)は、ナチスがキリスト教の言語を模倣することによって、自分たちの思想を自国民に神聖視させようとした問題について調査した。具体的には、ヒトラーの演説をもとにコーパスを作成し、これを統語構造や、キリスト教的語彙の観点から分析している。 C.研究分担者(齊藤公輔)は、ザクセン朝のドイツ初代国王、ハインリヒ1世が埋葬されている聖セルヴァティウス司教座教会で調査をおこなった。そして、ナチス時代に親衛隊が、ロマネスク様式への改築、鷲のシンボルの設置、SS旗などによる装飾などを施すなどして、教会を「ゲルマン的世界像」を伝えるメディアへと改造してしまった経緯を明らかにした。 なお上記の研究成果は、全国学会でのポスター発表をとおして、他の研究者たちに周知させるとともに、そこで浮かび上がった課題について、検討をおこなっている。そして、研究成果を公表するため、書籍の出版準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記した計画にしたがい、各研究者は資料収集と研究を進めており、また全国学会での発表もこなしている。したがって、研究は順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、上記の研究にくわえて、鉤十字をはじめとする、ナチス時代における他の表象も考察にくわえつつ、当時の「集合的記憶」に関する研究を多面的に展開するとともに、戦後、ナチスが欧米の「集合的記憶」において、どのように扱われていったのかも調査する予定である。 そして、そうした研究成果をまとめて、学術書として出版したい。
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Causes of Carryover |
研究分担者への割り当て分に関し、機器の購入にかかった費用が予算よりも低くすんだために、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度も、各研究者はドイツへ渡航し、資料収集にあたる。そのさい、全額が使用される予定である。
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Research Products
(4 results)