2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370416
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
安元 隆子 日本大学, 国際関係学部, 教授 (40249272)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | チェルノブイリ / みえない雲 / グードルンバウゼヴァング / 若松丈太郎 / 福島 / かなしみの土地 / 原発文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ドイツにおけるチェルノブイリ原発事故を描いた作品として、グードルン・バウゼヴァングの『雲』の研究を中心に行った。作品分析、研究の成果は「チェルノブイリ原発事故をめぐる言説(2)グードルン・パウゼヴァング『みえない雲』を読む」として、『国際関係研究』第35巻第1号(平成26年10月)に発表した。新旧二つの生き方の葛藤の中で、主人公の成長過程を描いた小説であることを明らかにした。 ドイツの現在の原発政策への影響、及び背景にあるロベルト・ユングの思想など、ドイツの哲学や社会思想については、論文のページ数の関係で別稿に執筆予定である。 3月にはドイツで作品に登場するグラーフェンファインフェルト原発をはじめ、いくつかの都市を巡り、作品の世界を検証することが出来た。また、ベルリンで行った作品発表以降の批評調査結果を、今後まとめて発表する予定である。 また、日本におけるチェルノブイリ原発事故を描いた作品として、若松丈太郎の詩集『原発難民』収録の「連詩 かなしみの土地」を取り上げ、作品の表現に沿って詳細な読みを試みた。その背景には様々なヨーロッパの戦争を巡る記憶や、映画の表象が背景にあることを明らかにし、それだけではなく、初出形には日本の近代文学者である北村透谷の存在があることを明らかにし、その複層性を指摘した。そして、その現実を直視し、想像力で二つの世界を往還する彼の詩的メカニズムを他作品との関連の中から抽出した。それは宮澤賢治の作風にも通底し、石川啄木などの詩人の使命とも重なってくる東北的なものであることが明らかになった。2月には、若松の原発への怒りを肌で感じるべく、福島のいわき市に原発被害の実態を知るためのスタディツアーにでかけ、作品理解の一助とした。論文は現在『日本近代文学』に投稿中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で挙げた項目への取り組みとしては順調に進んでいるが、調査報告や作品研究、分析結果などの研究結果をすべて論文にしきれていない。書きたいことはあるのだが、それをまとめることが出来ないでいる状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
最後の一年であるので、これまでの研究成果を次々とまとめていくことを心掛けたい。 日本のチェルノブイリに関する他の作品について論文としてまとめること。また、映画を比較し、日本人の感性を明らかにすること。ゲームや新しい娯楽小説の中に登場するチェルノブイリについてまとめること。以上はこれまでの研究もあるので遂行したい。放射能についての表現比較は、論文まで行かなくても、調査を終わらせたいと考えている。
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Causes of Carryover |
入試その他、勤務の関係で3月中旬にドイツの文献調査とフィールドワークが3月に行かざるを得なかった。帰国後に精算をしたため、3月分の申請に間に合わなかった。実質は計画通り、助成金を使い終わっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未申請となっている費用は4月に申請する。
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Research Products
(2 results)