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2014 Fiscal Year Research-status Report

非音素的な音声特徴の獲得と学習に関する研究

Research Project

Project/Area Number 25370443
Research InstitutionWaseda University

Principal Investigator

北原 真冬  早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00343301)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 米山 聖子  大東文化大学, 外国語学部, 准教授 (60365856)
田嶋 圭一  法政大学, 文学部, 教授 (70366821)
Project Period (FY) 2013-04-01 – 2016-03-31
Keywords音声学 / 第2言語習得 / 帰国子女 / 英語 / 音素対立 / 母音長 / 弾き音
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は「非音素的な音声特徴が第一言語および第二言語としてどのように獲得・学習されるか」である。そのために無声/有声環境における母音の長さを対象として,コーパスの調査と音声実験を行ってきた。英語の母音は,他の条件が等しければ有声子音の前では長く,無声子音の前では短い。例えば,"bit"に比べて"bid"の母音は150%ほどに長い。しかし,多くの日本の大学生はこのことを知識として持たず,発音教育を通じて身につけることもほとんどない。大学生の英語発音に関する音声コーパスを用いて調査したところ,有声子音前での母音の長さは無声子音前に比べて平均して113%程度であった。しかし,英語圏での滞在・留学経験を持つ大学生について音声実験を行い測定したところ,滞在期間が3ヶ月程度であってもそれが125%ほどの長さに達していることが分かった。短期の滞在(夏休みあるいは1学期分の短期留学)であっても,発音において明らかな改善が見られることは英語学習者を勇気づける結果ではなかろうか。

母音の長さの問題から派生した課題として,子音の非音素的な音声特徴である「弾き音(flap)」についても研究を進めている。例えば,アメリカ英語では"writer"と"rider"の二つの単語は,[t/d]のところを日本語のラ行音に近い弾き音で発音する。すなわち[t/d]の区別がこのペアの子音部分では失われることになる。しかし,元々の無声の/t/と有声の/d/という対立は,母音長の違いとして現れるとされる。弾き音化と母音長との相互作用を確かめる前に,基礎的な検討として,やはり英語圏滞在経験者の産出データを分析した。結果は,滞在の開始時の年齢,滞在期間,そしてTOEFLのスコアと有意な相関が見られた。弾き音は母音長よりも複合的で込み入った音声特徴が含まれているため,習得がより困難であることが示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究目的のうち,無声・有声環境における母音長については報告するに足る結果が出ており,国際学会や専門誌において既に発表を行った。2013年度には日本英語学会における招聘講演を行い,2014年度にはその内容をまとめた原稿を専門誌JELSに発表することができた。また,JELSとは切り口の異なる分析を含めて解釈しなおしたものを日本音声学会誌に投稿し,出版するに至った。

研究目的においては母音の無声化も取り扱う予定であったが,母音長から派生したflap音についての研究にまずは優先的に資源を割り当てた。母音長とflap音の問題は密接に関連しており,しかも実験と分析の手順においても似通った手法を用いることができるからである。これについては,2014年度にアメリカ音響学会で成果を発表するに至った。アメリカ英語の重要な特徴であるflap音についてアメリカ国内で発表したことで,こちらの予想を上回る多くのコメントやアドバイスを得ることができた。また2014年夏のLaboratory Phonologyという国際学会においても,内外の研究者から多くの示唆的なコメントやアイデアをもらうことができた。

以上のように,各種の音声実験とコーパス調査を研究成果としてまとめて発表できたことは,目標を超える達成度であるとも言える。しかし,計画中の母音の無声化については後回しになっている点に鑑み達成度を「おおむね順調」とした。

Strategy for Future Research Activity

研究目的のうち,無声・有声環境における母音長については学会発表等で有意義なフィードバックを得て,さらに研究の精度を高めるべく分析を進めている段階である。特に,非音素的な特徴を第二言語学習者が短期間で効率的に学ぶ方法については,多くのアイデアがありはするが,その実効性を確かめるための調査方法についてよく検討しなければならない。一方,flap音についての実験結果は必ずしも短期の滞在での改善を示唆してはいないので,よりラディカルなアイデアと探索的な研究を必要とする。

まずは,これまでの実験が産出データのみを計測したものであり,被験者の知覚・弁別能力については調査していないため,これらを目標に新たな実験を計画している。既に聴覚刺激の収録や実験環境の構築は終わっており,予備実験を行っている段階である。具体的には,音声学的な訓練を受けたネイティブスピーカーに,同じ単語でありながら,flap音の有無を変えた発音をそれぞれ発音してもらい,被験者にそれを同定させる。予備実験からは,刺激音が少々易しすぎて同定課題において大きな差がつかないことがわかってきたため,別なネイティブスピーカーの発音も収録している。

知覚実験はセットアップには大きな労力が必要であるが,一旦順調に進行できることが分かれば,結果の解釈にはそれほど時間がかからないため,H27年度中には少なくとも1箇所で成果を発表しさらにフィードバックを得ることとしたい。

Causes of Carryover

特に物品費,謝金に関して計画時点での見積もりと実使用額の間に差が生じたことが,次年度使用額の発生をもたらした主な原因である。しかし,特に,ハードウェア類はモデルチェンジのタイミングや円安との兼ね合いで購入時期を考慮する必要があるため,必ずしも年度ごとの計画によらないことが,より有効に研究を推進することにつながることもあると考える。また謝金についてもボランティアベースで被験者を集める以上,予定人数になかなか達しないことがありうる。

Expenditure Plan for Carryover Budget

旅費に関しては航空運賃の変動が大きく作用するため,ある程度のバッファーを確保しておくことが必要であり,場合によっては設定した費目を超えた柔軟な運用が望まれる。H27年度においても国際学会での発表を予定しており,「次年度使用額」と合わせての予算執行を考えている。また知覚実験に本格的に取り組むにあたって,ヘッドホンなどの消耗品の更新や追加購入に充てる計画である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2014

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results,  Acknowledgement Compliant: 2 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] Voicing Effect on Vowel Duration Corpus Analyses of Japanese Infants and Adults, and Production Data of English Learners2014

    • Author(s)
      Mafuyu Kitahara and Kiyoko Yoneyama
    • Journal Title

      Journal of the Phonetic Society of Japan

      Volume: 18 Pages: 30-39

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Journal Article] 後続子音による母音長の変化:幼児・成人の日本語コーパス分析と成人の英語学習データ2014

    • Author(s)
      北原真冬・米山聖子
    • Journal Title

      日本英語学会 JELS

      Volume: 31 Pages: 44-48

    • Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
  • [Presentation] Production of a non-phonemic variant in a second language: Acoustic analysis of Japanese speakers' production of American English flap2014

    • Author(s)
      Mafuyu Kitahara, Keiichi Tajima, and Kiyoko Yoneyama
    • Organizer
      168th meeting of the Acoustical Society of America
    • Place of Presentation
      Indianapolis, IN, USA
    • Year and Date
      2014-10-28 – 2014-10-28
  • [Presentation] Production of a non-phonemic contrast by native and non-native speakers: The case of American English flap2014

    • Author(s)
      Mafuyu Kitahara, Keiichi Tajima, and Kiyoko Yoneyama
    • Organizer
      Laboratory Phonology 14
    • Place of Presentation
      NINJAL, Tokyo
    • Year and Date
      2014-07-26 – 2014-07-26

URL: 

Published: 2016-05-27  

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