2014 Fiscal Year Research-status Report
ダイクシス,アナファーに基づくテクストの構成原理についての機能類型論的研究
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25370463
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田中 愼 千葉大学, 言語教育センター, 教授 (50236593)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ドイツ語 / 対照言語学 / 機能類型論 / ダイクシス / アナファー / 国際情報交換 ドイツ / 国際研究者交流 ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,「テクスト構造と文構造に共通の原理としてのダイクシス,アナファーが言語ごとに異なった強さで文法化されている」というTanaka (2011)の観察を出発点に,研究を進めているが,研究二年目の26年度は,典型的に文レベルの現象として記述される諸現象(動詞定形二位,格表示)が,文のレベルを越え,テクスト構成に有機的に関与していることを示すことを目指した。 そのため,25年度末(3月)から26年度にかけ,ドイツ語の定形二位の機能と日本語との対応関係に関する研究発表を国内外の研究集会で5回にわたっておこなった(ミュンヘン,京都,広島,札幌,葉山,うち三回は25年度中)。これと平行する形で,文レベルの構成機能を担っている格表示が広く文を越えた現象を表示していることを言語対照によって明らかにする論文を発表し(26年度3月),またその形態的な特質を明らかにする研究発表をドイツ・ハノーファー大学で行った(26年3月)。 また,ダイクシス,アナファーの対照研究を行うために,ミュンヘン大学ライス教授,同アブラハム教授,同ツェーマン博士らと二回(26年9月,27年3月)にわたって集中的な討議を行った。その成果は,27年度に予定しているミュンヘン大学言語学サマーアカデミーの場で国内外の研究者に提示することを予定している。 また,ミュンヘン大学ライス教授とは,本研究を支える基本的概念をまとめるために共同研究をすすめているが,その一つの成果として,同教授の著書「Sprachphilosophie」(言語哲学)の翻訳を進めている。 本年度8月には,これらの成果を総合的に公開するためにミュンヘン大学においてサマーアカデミーを実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している。 本研究の中心となる「テクスト構成の原理」であるダイクシスの各言語における機能を記述するために,一見してダイクシスとは無関係に思われる文法現象(定形二位,格表示)を精査することにより,そのテクスト構成の働きを明確にするという試みを行ったが,それは,計5回に上る研究発表に結実している。また,ドイツを中心とする研究者と研究交流を進めているが,その成果として,研究発表,研究書の翻訳を進めており,また,成果発表のための国際集会の共同開催を計画している。これらの点に関しては当初の研究計画で構想していたものを上回るものと考えられる。 若干遅れ気味なのは,具体的なテクストの分析であるが,これについても,本夏の国際集会で内外の研究者と情報を交換し,具体的な成果を出していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように,本年夏には,ドイツ・ミュンヘン大学で国際研究集会としてサマーアカデミーの実施を計画しているが,その場において,ダイクシス,アナファーを中心としたテクストおよび文構成原理の言語類型論的なセクションを実施し,ドイツ,日本,タイ,台湾などの研究者とともに共同研究を進める予定である。 また,共同研究の成果の一つとして研究書の翻訳を完成させたい。この翻訳には日本国内の複数の研究者も携わっており,本研究の枠組みを越えた国際共同研究へと発展させることを計画している。
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