2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25370514
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
新田 哲夫 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90172725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木部 暢子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30192016)
久保 智之 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (30214993)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 輪島市海士町方言 / 移住と言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
最後の年度の本年度は、文法、語彙の記述を進めるとともに、成果の一部の公表を行った。まず、輪島市海士町に在住していた岩崎才吉氏の海士町方言語彙と用例を整理し、岩崎才吉著・新田哲夫編『輪島海士町のことば―語彙と用例集―』(2016年3月)を刊行した。海士町の生活語彙ともいえる基本語彙に多くの用例と解説を載せた一般向け方言語彙集であり、海士町への社会還元の役割もはたしている。その他、石川県海女習俗緊急調査執筆委員として、『海女習俗詳細調査報告』(2016年3月)の「言語」の節を担当執筆した。 研究期間を通じて、福岡県宗像市鐘崎から移住し、閉鎖的な社会を保ってきた輪島市海士町の「言語の島」の様子について以下の点が明らかになった。1)海士町のルーツ問題については、宗像鐘崎(九州北部)のと共通性が中間の他の地域に見られないことから、宗像ルーツ説は、言語の側から支持される。2)アスペクト形式「ヨル」は、能登地方では輪島市海士町以外には見られず、移住によって持ち込まれたと推定されるが、海士町の「ヨル」は、現在確認できる動作動詞の継続を表す意味に用法が狭まりつつある。3)語末母音と助詞の融合現象が激しいが、能登に移住してから発達したと推定される。4)アクセントは能登式から発展した東京式に似たタイプであるが、語末の母音の広狭が関係する。5)人称詞については、人の交流が激しい宗像市鐘崎が新しい体系をもち、移住していった海士町の方が古形を残している。 移住と言語の関係について、ルーツの側の言語がどんどん変化していく一方で、移住先の言語がむしろ古形を保存する興味深い現象が見られた。その一方で能登方言の特徴を取り込みながら、閉鎖的な社会の中で独自の変化を遂げた特徴の存在も明らかになった。
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Research Products
(2 results)