2017 Fiscal Year Annual Research Report
The study to clarify modern Japanese notation awareness by analyzing the notation of the work of Soseki Natsume
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25370520
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
佐藤 栄作 愛媛大学, 教育学部, 教授 (80211275)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文字 / 表記 / 自筆原稿 / 夏目漱石 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度から4月10日まで愛媛大学で開催した漱石生誕150年記念展示について、展示できなかった書籍も加えて77種の「坊っちゃん」本の表紙と冒頭部の写真に、表記の特徴のコメントを付し「漱石生誕150年記念展示「110年『坊っちやん』はどう変わったか」展示資料冒頭部と解説」を冊子(88p)にまとめ、関係方面に配付した。自筆原稿から全集、文庫、教科書に至る『坊っちやん』冒頭部の表記のバリエーションとそれに関わる調査・分析によって、近現代日本人には、理論上の上位層よりも、下位層に当たる漢字字体の差異を大きくとらえてしまう傾向であること、漱石自身の語形重視が、読み手には用字重視となっていることが明らかになった。これらの成果については、米国サクラメント州立大学、中国遼寧師範大学で、日本語表記の特異性として発表・講演した。国内でも漱石ゆかりの熊本で、熊本県立大学の特別講義として講演した。また7月には、松山坊っちゃん会と共催で、漱石研究の第一人者を招聘し、漱石の「書くこと」についての公開講演会を実施した。中島国彦早大名誉教授「講演を文字にするということ」は、講演「私の個人主義」が文字化されるプロセスとそこでの変化について、長島裕子氏「「倫敦消息」における「書く」意識をめぐって」は、同じ話題の書簡が、読み手によって異なること、雑誌に掲載されることを予想して書かれた書簡が作品となっていく中で生じる用語・用字などの変化についての講演だった。どちらも本研究テーマにふさわしいもので、質疑応答を含め、たいへん有意義な講演会となった。10月には、画期的な理論で漢字習得を実践する道村静江氏に、漢字を特定するための漢字の「呼称」の必要性についてお話しいただいた。我々の漢字把握を考え直す機会となった。その他、江戸末の俳人の手書き資料の解読、仮名の成立をどう考えるかについての研究も継続した。
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