2015 Fiscal Year Research-status Report
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25370524
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
井上 史雄 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 時空間変異研究系, 教授 (40011332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸江 信介 徳島大学, その他の研究科, 教授 (90271460)
木村 泰知 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (50400073)
高丸 圭一 宇都宮共和大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60383121)
田中 宣広 岩手県立大学宮古短期大学部, その他部局等, 教授 (60289725)
半沢 康 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10254822)
Daniel Long 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (00247884)
山下 暁美 明海大学, 外国語学部, その他 (10245029) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 方言 / 公共用語 / 地方議会会議録 / 言語景観 / もっとやさしい日本語 / 方言グッズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「公共用語の地域差に関する社会言語学的総合研究」という新テーマに関して、データを集め、分析した。従来見落とされていた斬新なテーマとして、公共場面での意識的使用、談話としての方言差および気づかない方言や方言景観を取り上げた。地方議会会議録のデータベースを活用し、新しい研究技法を採用した。さらにインターネット上から情報を得て、世界の諸言語・方言の国際的相互普及も探求した。以上のデータを分析し統合することにより、日本語および世界諸言語の地理的変異と文体的変異の関連を把握しえた。災害時の多言語表示の問題に関しても、「もっとやさしい日本語」を使って、多国籍の居住者に平等に支援することを考えて、「災害支援カード」を作成し、主な機関に配布し、インターネットで公開した。公的場面で使われる方言として、方言グッズの収集に努めた。 日本語方言学の主な関心は、古来の日常の方言使用だった。21世紀に入り、高年層も方言を保持することが少なくなり、従来型の方言調査では、地域差がカバーできない。本研究では、新鮮なテーマとして、気づかない方言や、談話としての方言差、および公共場面での方言使用を取り上げた。また新しい研究技法を採用した。公共的場面として地方議会会議録のデータベースを活用し、さらにインターネット上から情報を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度はデータ収集と分析を進めた。また研究会などで最新の成果を公開した。1.地方議会会議録が公開されたので、研究分担者木村泰知が構築中のデータベースを拡大し、一般人にも利用しやすくした。このデータベースを活用して、多様な言語現象の地域差を分析した。人称代名詞に着目したところ、俗語的または卑語的、方言的な用例がかなり多く出て、地方議会という公共場面では、多様な言語表現が飛び交っていることが分かった。またオノマトペの多用と多様性をとらええた。井上、木村、高丸が担当した 。2.人々が意識していない「気づかない方言」を研究対象にし、文献およびインターネット調査により、地域差を確認した。ことにGoogle検索で、政府や自治体のような堅苦しいサイトと、ブログ利用者のように若者の俗語のとびかうサイトを比較して、公共用語の文体差・場面差を確認できた。教育用語や食品名などで各地の言い方の地域差が効率よく調査できた。井上および岸江、山下が担当した。3.方言の公共場面における意識的使用・方言景観については、現場で大量データを集積し、新たな方言差を分析した。以前からあった方言みやげ以外に、方言ネーミングが施設、商店、街路、行事、商品などに見られた。Google mapsの単語検索機能も活用し、全国的かつ国際的に地球規模でデータを収集した。さらに多言語使用、アルファベット使用にも着眼点を広げて、江戸時代、明治時代以降の歴史的動向もとらえて、長いタイムスパンの中に現代語を位置づけた。Google street viewで、現地に行かなくても、方言看板などを集成できる。井上、田中、Longが担当した。4.この派生として、方言絵はがきの追加データを整理し、ほぼ全データをインターネットで公開した。また分析結果をインターネットで公開した。井上が担当した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、データ収集を続け、本格的な分析を進める。以上の研究テーマの成果を最終的に統合する過程にある。現時点で観察される一見多様な現象にも、統一的原理が貫徹していることを明らかにする。学会・国際会議国際会議での発表を心がけ、外国語にも適用可能な手法であることを海外にアピールするとともに、このような観点からの研究の意義に気づいていない欧米の研究者を啓発し、関連情報を集める。 アジアの国際関係悪化により、日中韓の研究者によるワークショップが開催不可能になっていた。最近穏やかになったので、中国で開催する。具体的には以下の段階をとる。 1.地方議会会議録のデータベースは、ほぼ完成し、すぐに日本地図が出る形になったので、多様な言語現象の地域差を分析する。音韻、語彙、文法、敬語などに加えて、ポライトネス、談話構造、話の運び方などの大きな分析単位についても、社会言語学的技法を活用して分析する。国会会議録との対比にも着手する。2.「気づかない方言」については、Google検索機能を活用してインターネット調査を行い、地域差を確認する。3.方言の公共場面での意識的使用については、調査時点での包括的な大量データを集積し、意識的使用・活用に関する新たな方言差を分析する。Google map, Google street viewによる検索は、さらに続行し、国際的な方言差に考察範囲を広げる。 4.過去の方言使用についての諸データは、スキャナーにかけてpdfとして公開できる形にする。
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Causes of Carryover |
最終年度に日中韓の言語研究者によるシンポジウムを計画し、南京での国際会議で中国の研究者と面談した。対日感情の悪化が収まらないことから、少し延期したいという申し込みが、中国の研究者からあった。その後の連絡でも、学内の協力が得にくいとの反応で、2016年の新年度になれば、中国での開催に大学当局の協力が得やすくなるだろうとの予測だった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年中国南部の福建省での開催計画が進行中である。 参加者の旅費および発表準備の資料整理にあてる。
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Research Products
(10 results)