2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370542
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
島 越郎 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50302063)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 動詞句省略 / PF削除 / 空所スロット / 再分析 / 発音されない代用形 |
Research Abstract |
英語には、次のような省略文が存在する。 (1) John loves Mary, and Tom does too. この文は、助動詞doesの後で動詞句love Maryが省略されている動詞句省略(VP-ellipsis)の例である。申請者は、島 (2011) において、省略文の派生として、音声解釈部門(PF)における削除操作と意味解釈部門(LF)におけるコピー操作を引き起こす形式素性に関する仮定として、i)コピー操作を引き起こすCopy素性(C-F)を持つ主要部の補部には、空所スロットが選択される、ii)削除操作を引き起こすDeletion素性(D-F)を持つ主要部の最大投射はPFで削除されると提案した。更に、C-Fにより統語部門に導入された空所スロットが発音されない空の代用形(pro-form)に再分析(reanalysis)されると仮定した。この仮定によると、(1)の動詞句省略文の派生には、PFにおける削除操作による派生と発音されない代用形を含む派生の二つが存在することになる。本研究では、後者の分析、つまり、動詞句省略文の省略箇所に発音されない空の代用形を仮定する分析の更なる経験的妥当性を考察した。具体的には、PF削除の派生のみを仮定する分析では、i)省略された動詞句がその先行詞内に含まれる先行詞内動詞句省略文の存在、ii)主語以外にwh語句が残留要素となる動詞句省略文の存在、iii)先行詞文とは異なる態を持つ動詞句省略文の存在について適切な説明を与えることができないことを指摘し、空の代用形を含む派生を仮定することにより、これら3つの動詞句省略文を統一的に説明することが可能となることを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、himself/herself等の再起代名詞(reflexives)と呼ばれる照応表現が先行詞内に含まれる動詞句省略文の解釈についても分析する予定であったが、この問題を扱うにはもう少し時間が必要になることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
空所スロットから発音されない空の代用形への再分析の仮説が、動詞句省略文以外の省略文である間接疑問縮約文、空所化文、擬似空所化文等についてもどの程度当てはまるのかを明らかにしていく予定である。
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