2015 Fiscal Year Annual Research Report
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25370542
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
島 越郎 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50302063)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 照応表現 / 省略現象 / 削除操作 / コピー操作 / 同一性問題 / 生成文法 / 統語構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生成文法の枠組みにおいて、発音されない照応表現である省略現象に関する3つの主要な研究課題に取り組んだ。具体的には、1)省略箇所には統語構造が存在するのか?(構造の問題)、2)省略文はどのような操作により派生するのか?(派生の問題)、3)省略箇所と先行詞に課せられる同一性条件は何か?(同一性の問題)の問題を考察した。先ず、構造の問題については、省略箇所に発音されない統語構造が存在する場合と存在しない場合があり、後者の省略箇所には発音されない代用表現(pro-form)が生起することを明らかにした。次に、派生の問題については、省略箇所に発音されない統語構造が存在する場合、音声部門における削除操作と意味部門におけるコピー操作の2つの方法により省略文が派生し、これらの操作を引き起こす形式素性がChomsky (2000, 2001)等で提案されている統語構造構築の単位となるフェーズ主要部に随意的に基底生成されることを明らかにした。最後に、同一性の問題については、省略文中の残留要素により引き起こされる焦点化が要求する意味的対比条件と音声部門における削除操作の適用に課せられる構造的同一条件の2つの条件が省略文に課せられることを明らかにした。本研究が提案する分析は、生成文法における省略文の先行研究であるHankamer and Sag (1976)、Williams (1977)、Lobeck (1995)の分析が抱えていた理論的・経験的問題を克服し、間接疑問縮約(Sluicing)、動詞句削除(VP-ellipsis)、擬似空所化(Pseudogapping)、空所化(Gapping)、単一要素残置(Stripping)と呼ばれる様々な省略表現に見られる共通した特性と個別の特性に対して統一的説明を与える。
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