2013 Fiscal Year Research-status Report
日英語圏における「家族」のカテゴリー化と、関連する社会問題について
Project/Area Number |
25370554
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山田 仁子 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部 (総科), 准教授 (00200733)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カテゴリー化 / 概念 / 家族 / 社会 / 英語 / 日本語 / 認知語用論 / コーパス |
Research Abstract |
英語圏と日本語圏において「家族」がいかに「カテゴリー化」されているかを調べる、という研究の目的に向かって、1年間順調に研究を進める事ができた。ただ当初の計画では、1年目は英語圏に絞って分析する予定だったが、実際には日本語圏についても研究を進めることとなった。二つの言語圏における現象を比較することで、かえってより深く考察を加える事ができたと思われる。異なる系統に属する複数の言語を扱うことで、人間一般に共通する普遍的「カテゴリー化」のパターンを解明することにつながり、また英語圏と日本語圏の現代社会における「家族のカテゴリー化」の特徴を解明することにもつながってきている。 具体的な研究方法としては、英語の"true" "real" と日本語の「本当の」という語彙を含む例を、それぞれのコーパスから収集し分析した。英語の"true" "real" と日本語の「本当の」という語彙はなんらかの事物をカテゴリーに確実に組み入れる表現であり、それぞれの言語におけるカテゴリー化現象を明らかにする。 分析の結果、英語においても日本語においても、事物をカテゴリーの中へ組み込む2種類の力が働いていることが確認された。カテゴリーの「際立つ性質」を備える物をカテゴリーの中心へ引きつける「求心力」と、カテゴリーの「境界基準となる性質」を備える物をカテゴリーの枠より内側へと組み入れる「分別力」である。またこの「際立つ性質」や「境界基準となる性質」は状況に応じて異なるものが設定可能であるがゆえに、カテゴリーも状況に応じてその姿を変える事になっている。 英語圏と日本語圏の「家族」に関する語彙のカテゴリー化における「際立つ性質」や「境界基準となる性質」は、共通する点もあるが、かなり異なる特徴も見られた。英語圏と日本語圏の現代社会における「他者のカテゴリー化」の特徴を、次年度以降の研究で更に明らかにできるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英語圏と日本語圏において「家族」がいかに「カテゴリー化」されているかを調べる、という目的をかなり果たした。 英語圏については、WordBanksOnlineコーパスのイギリス英語のテキストから、また日本語圏においては『現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)』から、英語の"true" "real" および日本語の「本当の」という語彙と「家族」構成員を表す語彙の組み合わせの例を全て収集し分析した。「家族」構成員を表す語彙は、英語ではfamily, mother, father, daughter, son, child, 日本語では「家族」「母親」「父親」「娘」「息子」「子供」である。 上の分析により、英語圏と日本語圏それぞれにおける家族構成員のカテゴリー形成の過程と、カテゴリー形成にとって重要な家族構成員の性質をかなり明らかにすることができた。 「研究の目的」の一つとしていた人間一般に共通する普遍的「カテゴリー化」のパターンの解明に近づく事ができたし、英語圏と日本語圏の現代社会における「他者のカテゴリー化」の特徴を解明するという「研究の目的」に対しても、まだ充分というにはほど遠いが、「家族」という身近な他者のカテゴリー化を観察することで研究を進める事はできた。 研究の成果については1論文と3研究発表(国外1、国内2)でも発信することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
英語においても日本語においても、カテゴリーの「際立つ性質」を備えるものをカテゴリーの中心へ引きつける「求心力」と、カテゴリーの「境界基準となる性質」を備えるものをカテゴリーの枠よりは内側へと組み入れる「分別力」が働く事、またこの「際立つ性質」や「境界基準となる性質」は状況に応じて異なるものが設定可能であるがゆえに、カテゴリーも状況に応じてその姿を変える事が明らかになり、こうした点は英語と日本語で共通すると認められた。しかし、カテゴリー形成のシステムについて相違点はないのか、またあるとすればどのようなものなのかといった問題についてはまだ充分に検討を加えているとは言えず、今後深く分析検討していく必要がある。また「際立つ性質」や「境界基準となる性質」などについても、2言語圏の例の分析により、共通点と相違点を明らかにする必要がある。 今後は、英語圏と日本語圏における「家族」構成員を表す語彙一つ一つについて、個別にも比較する事によっても緻密な分析を進めていく。 更には、英語圏と日本語圏の現代社会において、人が「家族」という身近な他者をどのように捉えているのか、無意識のうちにどのようにカテゴリー化しているのかといった問題にまで考察を進めていきたい。 また研究の成果については、順次、論文執筆や国内外の学会での講演により発表していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
注文した物品の納入が遅れてしまったために次年度使用額が生じた。 生じてしまった次年度使用分の内ほとんどの額については、翌年度4月に納入および支払いとなった。
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Research Products
(4 results)