2014 Fiscal Year Research-status Report
日英語圏における「家族」のカテゴリー化と、関連する社会問題について
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25370554
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山田 仁子 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部 (総科), 准教授 (00200733)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カテゴリー化 / 家族 / 父親 / 英語 / 日本語 |
Outline of Annual Research Achievements |
英語圏と日本語圏における「家族」にまつわるカテゴリー化についての研究は今年度も順調に進める事ができた。 ただし、研究進行の順序については変更する事になった。交付申請書における「研究実施計画」では今年度日本語圏を中心に研究を進める予定だったが、前年度に日本語圏についても研究を進める事ができたため、今年度は再び英語圏を中心に研究を進める事になった。これにより以下の2本の論文をまとめることができた。 1.「FATHERカテゴリーの形成過程に見る英語圏における父親像」, ハイペリオン, Vol.60, 3~12頁, 2014年. 2.「イギリス英語圏における家族像ーtrueとrealで探るFAMILYカテゴリーの成立条件ー」, 徳島大学総合科学部言語文化研究, Vol.22, 127~147頁, 2014年. まとめた結果は英語圏のものだけにとどまったが、常に日本語の場合との比較を念頭に置いているため、次年度は日本語圏についても、また二つの言語圏における「家族」に関するカテゴリーの比較についても、研究を進める事ができる見通しである。 今年度の研究から、カテゴリー化一般についての考察を深める事ができると共に、日本語圏における「父親」や「家族」とは異なる、英語圏におけるFATHER, FAMILYカテゴリーの特徴が明らかになった。FATHER, FAMILYという二つのカテゴリーに人を組み入れる基準となる条件には日本語圏に見られない性質のものもあり、またその条件も状況により取捨選択され、これに伴ってカテゴリー自体も変化する現象が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
英語圏と日本語圏において「家族」がいかに「カテゴリー化」されているかを調べるという当初計画した目的に対して、今年度の成果としては英語圏についてのみ2本の論文としてまとめることになった。昨年度は英語圏と日本語圏の両方の言語圏における「家族」に関するカテゴリー化について全体的に広く観察したのに対して、今年度は英語圏におけるFATHERとFAMILYの二つのカテゴリーについて焦点を絞り、分析と考察を深める事ができた。 今年度中に発表するには到らなかった日本語圏における「家族」のカテゴリー化については、昨年度に既にある程度まとめることができたし、今年度英語圏について研究をする際にも、日本語圏の場合との比較を念頭に置いていたため、今後来年度の研究へと順調に進める事について支障はない。来年度には日本語圏についての研究を学会で発表する予定にもなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本語圏における「家族」に関するカテゴリーについて、更に深く研究を進め、また日本語圏と英語圏での共通点と相違点について明らかにしていく。言語資料を更に収集し、また更に言語学に留まらず社会学や心理学などにおける「家族」の研究にも目を向けて、問題を深く掘り下げて探求解明していきたい。 実際に用いられた言語現象を収集した資料データであるコーパスを用いた研究を続けており、こうした研究は有意義な結果をもたらしているが、研究を深めるためには不足する点も明らかになってきた。コーパスだけでは、特定の言語表現が用いられる状況を明確に知ることに困難が伴う。また最新の社会状況や人間の心理状況も、社会学や心理学といった他の分野における資料から知る必要があると思われる。
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Causes of Carryover |
海外の学会に参加して研究成果を発表する予定であったが、論文にまとめる事に集中して、学会発表に対しては今年度中には準備が充分にできなかった。よって海外での学会参加のための支出がなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に海外での学会発表を2回行う予定である。2015年5月にフランスのグルノーブルで開催される「フランス認知言語学会」、また7月にベルギーで開催される「国際語用論学会」に参加して論文を発表する。この2回の海外での学会参加に多くの費用が必要となる。
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Research Products
(4 results)