2016 Fiscal Year Research-status Report
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25370748
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
胡 潔 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 教授 (30313399)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 婚姻語彙 / 漢字表記 / 和訓 / 台湾原住民 / アミ族 / パイ湾族 / 卑南族 / 妻方居住 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、文化交流史の視点から古代日本の双系的基層社会と外来の父系制原理との関係性に着目し、単系(父系)原理が双系社会の日本に移入された後に現われた制度上の父系的偏向と居住上の母方的偏向の並存のメカニズムを究明することを目標としている。 今年度は、主に以下の作業を行った。 ①漢字表記と和訓に関する考察と公表:昨年に続き、婚姻語彙をめぐる漢字表記と和訓の関係についての考察を行った。漢字の音義及び中国語との関係性を基準に、音のみを借用した字音表記語、漢字を新しく合成した合成語、中国語にある婚姻語彙を借用した既成語の四つに分けて考察し、和訓と漢字の意味のズレや両社会の婚姻習俗の相違について指摘した。考察の一部を「和訓と漢字―婚姻語彙を中心に」という題で日韓合同シンポジウム(名古屋大学・2016年12月10日)で公表した。②台湾原住民社会に関する文献調査と意見交換:台湾大学人類学博物館、台湾原住民族図書資料中心、台湾中央研究院民族学研究所図書室、国立台湾先史文化博物館などの研究機関へ赴き、台湾原住民社会の資料収集を行った。主にアミ族、パイ湾族、卑南族を対象に、居住形態、婚姻形態、親族呼称、財産相続について調査を行った。とくにアミ族社会では、伝統的な妻方居住が行われている一方、漢民族の娶嫁婚も取り入られている。妻方居住と夫方居住の混在は、直接漢民族との通婚や妻方居住の男性に対する漢民族の見方の影響によるものと考えられる。このことは、直接漢民族との通婚がなく、律令の婚姻規定や戸籍制度の導入により父系制を取り入れた古代日本社会の特徴を考える上で参考となった。また台湾中央研究院民族学研究所や国立政治大学民族学系の研究者らと意見交換を行い、原住民社会にある様々な婚姻形態に関する情報や研究の最新情報を入手することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、四年目に当たる本年度は調査内容の分析及び執筆となっているが、古代日本社会における父系制の移入過程の問題と双系社会の現状の調査を分けて行う必要があるため、二つに分けて作業を進めた。昨年度古代日本における父系制の移入過程に関する執筆は予想以上時間がかかったため、双系社会に関する調査の一部は今年度と次年度にずれ込むことになったが、全体としておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究の最終年度にあたり、研究の推進方策として以下のことを考えている。 ①双系社会の調査と分析:これまで行ってきた中国西南部少数民族、タイ北部山地民社会、台湾原住民社会の調査・分析を引き続き行う。 ②研究結果の公表:調査内容の分析・検討をした結果を口頭発表または論文形式で公表する。
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Causes of Carryover |
台湾原住民社会の調査は昨年度末に行ったため、その調査資料の整理に使用する予定の人件費が次年度に執行する結果になったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては、繰越分と29年分として請求した研究費を合わせて、主として人件費、旅費、会議費、資料代に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)