2013 Fiscal Year Research-status Report
平安時代の『大般若波羅蜜多経』遺品の総合的調査と歴史研究資料としての資源化
Project/Area Number |
25370819
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館 |
Principal Investigator |
野尻 忠 独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館, その他部局等, 研究員 (10372179)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大般若波羅蜜多経 / 安倍小水麻呂 |
Research Abstract |
今年度は、慈光寺所蔵『大般若波羅蜜多経』(安倍小水麻呂願経)全152巻のうち、132巻について調査を実施した。事前に準備した調書に沿って、巻頭から巻末まで全巻開いて必要情報を採取し、巻頭・巻末部について写真撮影をおこなった。これらの調査・撮影は、複数人の協力者の手助けを得て、完了させることができた。当初目標の152巻には及ばなかったが、計画に近い水準で研究は進行している。調査による新知見としては、本来一巻でなければならない巻で、現状では複数巻に別れて装丁されているものが、多数存在すること、また、巻の途中で本来は別巻であるものが継がれている場合があることなどが挙げられる。さらに、墨による声点・字音点が、想定していたより多数存在することも確認された。なお、今年度の調査の現場において、作業補助者の必要性が痛感されたため、次年度より研究分担者を依頼して研究体制を強化する。 寺外に出ている僚巻について、今年度は東洋文庫が所蔵する巻第百四十を、同文庫のご厚意で調査することができた。巻第百四十の特筆される点は、裏打ちが施されていないことで、近代的な修理がなされる前の『大般若波羅蜜多経』の状態を知ることができた。写真も入手できる見込みで、今後の研究資料として活用したい。 同時代の他の経巻・典籍資料に関する調査は、今年度は五島美術館と名古屋市博物館で実施した。 また、当初は研究期間の2年目以降に計画していた、9~11世紀『大般若波羅蜜多経』の所在情報調査を、今年度から着手した。順次進めているが、対象となる文献が数多いため、今後は協力者の補助を得ながら進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度目標にしていた調査対象152巻のうち、86%にあたる132巻の調査を終えた。並行して寺外流出分の巻も調査を進めており、概ね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
『大般若波羅蜜多経』(安倍小水麻呂願経)の慈光寺所蔵分については、次年度の早い段階で全巻調査を終え、調書のデータ化をおこなう。また必要に応じて原本の再調査を実施する。 寺外流出分については、まずは所在確認をおこない、次に原本の調査・撮影へと段階を踏んで進める。 以上の調査を推進するにあたり、次年度より研究分担者を依頼して研究体制を強化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究補助・データ入力のための協力者を雇用し、謝金を支払う計画であったが、適当な人材が見つからなかったため。 当初計画にはあげていなかったが、今後の研究遂行のために、写経料紙を調査するための顕微鏡を購入する。
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