2014 Fiscal Year Research-status Report
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25370836
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
陳 來幸 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (00227357)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園田 節子 兵庫県立大学, 経済学部, 教授 (60367133)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 華僑華人 / 移民 / 冷戦 / ラテンアメリカ / 台湾 / 日本 / 米国 / カナダ |
Outline of Annual Research Achievements |
戦後日本華僑に関する中華民国政府の公文書と国民党関連史料については昨年度に引き続き台湾で史料収集を行った。今年度は国史館所蔵史料と中央研究院近代史研究書図書館を中心に調べたが、最終年度にも補充調査が必要と判断している。また、1949年以降の中国側の史料については、華僑研究者にはあまり利用されていない上海市档案館での調査を実施した。 また、分担研究者とともに北米での実地調査を行った。カナダバンクーバーとヴィクトリアにて史料調査を行い、公文書館などに残る広東人中心の老華僑社会に関する史料状況を把握するとともに、現地研究者と情報交換を行った。戦後に増加した台湾人ニューカマーについては台湾系一世移民や、華僑アイデンティティを扱う台湾系作家、台加文化協会などコミュニティを運営する中心人物等に対して訪問調査を行い、意見交換行った。当初の予定を変更し、研究蓄積の多い米国ではなくカナダ西海岸を調査地としたのは、広く米州大陸各地で形成された広東人社会と戦後の新移民との関係性についての概要を把握するのに適していると判断したからである。 アウトプットとしては、研究代表者は平成25年度に実施した中国広東省梅県での客家関連調査をまとめ、国内外の研究会や学会にて報告を行い、専門領域の研究者と意見交換を図った。また、戦後日本の華僑社会の左傾化現象に関し、韓国仁川で開催された国際学会にて報告を行い、各地から参会した研究者や現地の華僑華人たちと学術交流を進めた。研究分担者はパナマで開催されたISSCO(世界華僑華人研究)学会においてカリブ海地域華僑社会の調査報告をおこない、ラテンアメリカの華僑研究を推進する北米・中米・ラテンアメリカの研究者との情報交換と学術交流を進めた。また、その成果は上智大学イベロアメリカ研究所でも発信し、日本のラテンアメリカ研究者との研究関係を築いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦後日本華僑社会に関する研究はほぼ順調に進んでいる。研究代表者が副館長として関わる神戸華僑歴史博物館が主催する華僑華人への口述記録シンポジウムや、代表者が代表・分担者が事務局長として主催する神戸華僑華人研究会の活動により、戦後日本華僑に関わる新事実の発掘と当事者たちへのファミリーヒストリーの聴収は着実に進行し、資料としても蓄積されている。一方、戦後の帰国華僑に対する中国での調査は、昨今の日中関係による配慮から、微妙な問題を扱う個人への訪問調査は控えることとし、今年度は当初予定を変更し、上海での文献調査に規模を縮小した。 また、国際比較の視点から必要とされる北米調査のうち、当初平成26年度には米国調査を予定していたが、研究分担者の研究展開がより広範にカリブ海・ラテンアメリカへと広がってきたことに鑑み、戦後中華民国が行ったの米州僑務を俯瞰的に捉える必要から、当初の予定を変更してカナダ西海岸の調査を実施した。 アウトプットについては、論文集や学術雑誌への投稿や学会・研究会での口頭発表にとどまらず、神戸華僑歴史博物館の『通信』での記事執筆や展示パネルの作成などを通じ、社会への還元にも努力している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度、状況を見極めつつ被訪問調査者に影響がない程度に、協力者の仲介により北京にて帰国華僑に対する訪問調査を実施し、可能な範囲で資料調査を行う。諸条件が許せば、台湾での補充調査を行う。中国における昨今の公文書館の外国人への制限的開放状況を考え、中国調査は、研究代表者単独での実施で十分だと判断している。 研究分担者は進展が遅れている米国西海岸華僑社会の戦後状況を明らかにする史料を調査収集する。予定地は台湾移民が多く入ったポートランドならびに旧来の華僑社会と戦後の新華僑の混在状況が発生したサンフランシスコとする。戦後すぐに始まる冷戦の影響が、双方の地への台湾移民のあり方の違いや現地政府の対応ならびに中国国民党の僑務政策にどのように及んだかを明らかにする。 戦後冷戦期の華僑社会についての研究はこれからまだまだ多角的な検証が必要であることがこれまでの調査で明らかとなった。今年度は、条件が許せば、今後の共同研究を視野に、朝鮮半島や東南アジアなどをフィールドとする華僑研究者を国内外から招へいし、最後に国際シンポジウムを開催し、三年間の成果を研究者の間で共有したいと考えている。代表と分担者とがそれぞれのまとめに入ることに集中し、複数名での調査を単独で行う方式に切り替えることで、外国人研究者の招へいが可能となるよう調整していきたい。
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Causes of Carryover |
種々の外的要因により研究分担者の中国での資料調査に多くの成果が期待できないと考え、その中国調査を取りやめた。しかしながら、平成26年度の経験から、北米調査にかかる経費が当初予想より多額とならざるを得ないと判断し、全体として最終年度の計画(代表者の北米調査を取りやめ、分担者単独とする)を変更した。また、当初の米国西海岸華僑社会ではなく米州全体の華僑社会の戦後状況を日本との比較で俯瞰する条件が分担研究者サイドで整ったという研究環境変化も理由の一つである。そのため、研究分担者の調査地は平成26年度にはカナダ西海岸、平成27年度には米国西海岸(サンフランシスコとポートランドの二か所)とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)以上の理由から、最終年度には代表者は戦後冷戦期の日本華僑社会の分析に集中し、研究分担者は戦後国民政府の米州華僑社会に対する僑務政策の展開に集中することとした。また、最終年度には資料収集効果がより期待できる台湾での資料補充調査に資源を注入したいと考えている。 (2)2年間進めてきた調査と国内外の研究者との学術交流により、我々は戦後冷戦期の華僑社会研究の必要性をこれまで以上に痛感するようになった。最終年度には二人の研究を総合し、国内と海外の研究者(朝鮮半島・金門・南洋・共産党の僑務政策を専門とする研究者を予定している)を招へいして国際シンポジウムを開催し、今後の共同研究進展の基礎ときっかけを築きたいと考えている。
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Remarks |
(1)神戸華僑歴史博物館常設展刷新事業による展示パネル(2014年4月~)6点(ファミリーヒストリーから見る南京町)を制作【指導院生との共同制作】。 (2)神戸華僑歴史博物館春節祭特別展「震災20年と新しい絆」(2015年2月12日~2月28日)でのパネル展示のうち4点を制作。引き続き常設展示中。
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Research Products
(20 results)