2016 Fiscal Year Research-status Report
16-19世紀におけるトスカナの封建貴族層とその社会的役割
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25370876
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
北田 葉子 明治大学, 商学部, 専任教授 (30316161)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 西洋史 / イタリア史 / 近世史 / 貴族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度から利用を開始したマジストラート・スープレーモの史料の解読を進めることができた。マジストラート・スープレーモは、君主の諮問機関であると同時に、一種の最高裁判所の役割を担っている。君主がかなり容易に介入できる裁判所であり、この機関が、封建貴族たちの内部争いを扱っていた。封建貴族層と君主の関係により、ここで扱うのか、扱うとすれば誰が担当し、君主がどれほど介入するか等を見ていくことにより、君主と封建貴族の関係ををより明確に理解することができている。彼らは16世紀の国家形成期において、トスカーナ大公国の辺境を守るものとして重視されており、君主にとって重要な存在であったと考えられる。 ロートリンゲン家によるトスカーナ大公国時代の封建貴族については、研究文献からかなりの情報を得ることができた。中央集権主義的な初代のロートリンゲン港に封建貴族たちは反発し、そのような態度は二代目のピエトロ・レオポルド期にも継続している。一方で彼らの一部は、政府や宮廷、軍隊に19世紀に至るまで残り続けている。たとえば、ジョヴァン・バッティスタ・アンドレア・ブルボンは、フランス支配下ではフィレンツェ市の代表としてパリに送られ、旧体制の復活後は君主の侍従として仕えている。彼らは新しい国家の建設にも一定の役割を果たしていたといえるだろう。 またイタリア最大の自動車メーカーであるフィアット社の創始者ジョヴァンニ・アニェッリの息子のエドゥアルドの妻が、このブルボン家の一員であるヴィルジニアであったことも、20世紀に至るまで彼らが一定の力を持っていたことをうかがわせるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
メディチ家の君主を書記にあてた書簡を集めた膨大な史料群(フィレンツェ国立古文書館)であるメディチェオ・デル・プリンチパートの一部が、現在閲覧停止になっている。この閲覧停止の部分に、研究に必須な部分が含まれており、現在進行中の二つの論文を完成させることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるため、研究の完成を目指したい。まずはフランス支配下および19世紀の封建貴族の動向を調査することにする。次に、まだ見ていないマジストラート・スープレーモの史料を閲覧する。これは長期休暇中に行うことができるであろう。 現在閲覧が停止されているメディチェオ・デル・プリンチパートの史料についても、閲覧が再開されるものから順に、見ていく予定である。これらの史料は、もし閲覧が開始されれば、インターネットでも公開される可能性が高いので、日本にいても研究を進めることができる。
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Causes of Carryover |
大学における研究費使用の年度末締め切りが3月上旬にあるが、研究を最も進められるのは、大学における業務のない3月中旬以降であり、その時期に研究費を使用したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3月中旬以降の研究の中で必要であることが判明した書籍や論文などの入手のために利用する。
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