2017 Fiscal Year Annual Research Report
Feudal nobles and their roles in Grand Duchy of Tuscany from sixteenth to nineteenth century
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25370876
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
北田 葉子 明治大学, 商学部, 専任教授 (30316161)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 西洋史 / イタリア史 / 近世史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に引き続きトスカナ大公国の最高裁判所であるマジストラート・スープレーモの史料を閲覧し、封建貴族たちの係争にどのように君主が関係したかを分析し、封建貴族と君主の関係を探った。同時に、フィレンツェ国立古文書館において、昨年まで閲覧停止となっていたMediceo del Principatoという史料群を閲覧し、君主に宛てた封建貴族の書簡からも、君主と貴族たちの関係を探った。これらの史料から、君主と封建貴族たちはかなり強いきずなで結ばれていたことが分かった。近世国家成立期の君主はフィレンツェ市民よりも、貴族たちを忠実な臣下と考えていたと思われる。 一方、18世紀以降における封建貴族たちの動向についても研究を進めた。1737年以降のロレーヌ家のトスカナ大公国においても、封建貴族たちは宮廷職・軍事職・行政職と様々な役職を担っていたことが分かった。ただし君主との関係は必ずしも良いとは言えず、とくに封建貴族の特権への抑制に貴族たちが反発することもあった。また18世紀後半には皇帝から上納金を求められるようになり、貴族たちはその対処に苦慮することになる。ただし18世紀末にフランス軍がやってくるまで、貴族たちは力を保持し続けた。フランス支配下でも、トスカーナの有力者の一覧に封建貴族たちの名前を見ることができる。 しかしウィーン会議では、ロレーヌ家のトスカナ大公に封土の接収権が認められた。これにより、1815年にトスカーナの封土はすべて廃止される。しかしその後もトスカーナ大公がある限り、封建貴族たちは国政レベルでの活動を続けている。 以上の研究から、封建貴族の君主国における重要性を指摘できだろう。トスカーナにおける君主国の成立からその消滅の時まで、これまで市民層ばかりに注目が集まっていたトスカーナにおいても、貴族たちはエリートとして重要な社会的役割を担い続けたのである。
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