2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370889
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
定森 秀夫 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (90142637)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 百済 / 風納土城 / 夢村土城 / 爐形土器 / 小加耶 / 大加耶 / 高霊松林里遺跡 / 蓮華文せん; |
Outline of Annual Research Achievements |
韓国の発掘調査報告書・論文などの縦覧、および韓国の研究者からの情報をもとに、百済地域での加耶系陶質土器の出土例をいくつか確認することができた。百済の漢城時代のソウル・風納土城から小加耶の特徴的な固城タイプ陶質土器蓋などが出土している。漢城陥落の475年以前と考えられ、小加耶の地理的な位置から海を介した交流が考えられるが、反対に小加耶地域ではいまのところ百済系陶質土器を見出すことはできていない。 ソウル・夢村土城や忠南・天安では、爐形土器の出土が確認されている。これらは4世紀代の古式陶質土器内陸様式である。また、ソウル・夢村土城のかつての発掘調査で高霊タイプ陶質土器蓋片を私は確認していて、大加耶系文物の流入も考えている。 加耶地域における百済系文物は報告書などを縦覧しても、ほとんど見出すことができず、高霊池山洞古墳群などに若干認められるのみであった。今後もこの傾向はおそらく変わらないだろう。 さらに、韓国への調査旅行で貴重な遺物を実見することができた。嶺南文化財研究院が2014年に発掘調査した高霊松林里土器窯遺跡から、蓮華文せんが出土している。窯からの出土ではなく、2号窯周辺で採集されたものであるが、大加耶への仏教伝来の目安になる重要な遺物である。従来、大加耶への仏教導入は、横穴式石室である高霊古衙洞壁画古墳の羨道天井部の蓮華文から6世紀後半と考えられていたが、松林里遺跡の2号窯出土陶質土器は池山洞45号墳段階、すなわち6世紀前葉であることから、この蓮華文せんは6世紀前葉のものと考えられる。これは瓦葺きの寺院ではなく、王宮用に焼成された可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究では、金官加耶・大加耶・小加耶・阿羅加耶の4加耶の相互関係を示す考古資料の集成と検討を計画し、十分とは言えないが、一定の成果を得ることができた。翌年度以降の研究計画にはこのテーマは入っていないが、26年度・27年度も量的に膨大な報告書を縦覧し続ける作業を継続している。小加耶の所在する固城の古墳から大加耶系や新羅系の陶質土器が量的にはさほど多くないものの、出土しているなど、継続研究にも一定の成果を得つつある。 平成26年度の研究では、高句麗・中国南朝との対外関係をテーマとし、高句麗の現地調査を実施したものの、中国南朝の現地調査はできず、本年度に計画を延期したが、研究費の都合上実施できなかった。高句麗との対外関係は、考古資料では間接的ではあるが、ある程度考察可能であった。 これまでの2年間の研究成果の上にたち、平成27年度は百済との対外関係を示す考古資料の集成と検討を行った。本年度には、百済地域に2回調査に出かけ、かつ百済地域の報告書などを縦覧することで、4世紀から5世紀にかけて、加耶地域の勢力が漢城時代の百済と交流をしていた考古資料をいくつか確認することができたことと、加耶への仏教伝来を従来考えられてきた時期より5 0年ほどさかのぼらせることができる資料を見出すことができたことも成果であった。このような理由から、おおむね順調に進展していると自己評価するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は平成25~27年度の3年間で当初の計画通りおおむね進展している。したがって、平成28年度以降も当初の研究計画にそって本研究を実施していきたい。ただ、この3年間で課題とした各テーマは本年度も継続的に進めていく。特に、韓国の発掘調査報告書は膨大な量なので、縦覧を継続的に行い、加耶諸国間や高句麗・百済との対外関係を考古学的に示す資料を集成し検討する作業は継続する。 本年度は新羅との対外関係を示す考古資料の調査研究を実施する計画であ、当初の研究計画に従い、韓国調査などを実施していく。 延期していた中国南朝の調査は、本年度も計画の中に入れているが、研究費の関係で実施が無理な場合は、最終年度の平成29年度に実施することにしたい。
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Causes of Carryover |
3月23日から29日までの韓国現地調査での旅費および専用車借り上げ費用の一部を、滋賀県立大学一般研究費で充当したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の韓国現地調査の旅費・専用車借上費などに充当する計画である。
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