2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25370933
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉田 睦 千葉大学, 文学部, 教授 (00312926)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 氷下漁 / 気候変動 / 環境変化 / 網走湖 / 諏訪湖 / 八郎潟 |
Research Abstract |
本年度の主要な研究目標は、氷結環境を前提にする氷下漁という漁法による漁獲の現状について現地調査を含めて概況を把握することと、その歴史的な経緯を文献と現地の双方で可能な範囲で探ることであった。同時に地球温暖化と言われる近年の広域気候変動や環境変化全般の中で、過去と現在の相違の有無や相違の態様等、環境との関係を調査することを視野に入れた。 現地調査としては、かつての氷下漁主要実施地(八郎潟と諏訪湖)と現在の氷下(曳網・刺網)漁実施地(網走地区)への訪問・調査を行った。前者のうち八郎潟では、漁協や資料収蔵施設を訪問し、関係者への聞き取りと文献資料調査を実施した。諏訪湖では、漁協、資料収蔵施設を調査した。いずれも近代化の過程における諸要因(干拓や濫獲防止、社会関係の調整)が氷下漁の継続に主要な影響を与えてきたことが浮かび上がってきている。気候変動との関係については過去の体系的な情報を詳細に辿って比較するには至らなかった。 現在の実施地のうち、現地調査を行った網走湖と能取湖については、1月末に数日間参与観察を行った。網走湖は本年の氷下曳網漁が例年並みの期間(1-3月の合計35日)実施され、漁獲量は過去の水準より低めの60トンであった。この調査で網走湖での内燃機関を使った氷下曳網漁のメカニズムや実施方法が観察できた。また網走湖の西隣の能取湖において、氷下待網漁(ふくべ網)と同刺網漁を実見できた。道東地域において3つの氷下漁法による漁が実施されている現状を単年度で調査できたことは主要な収穫といえる。 今後は明年以降の気候状況と漁期との関係を中心に継続調査していくことが必要である。また、同じ道東であるが風連湖等においても氷下待網漁が実施されていること、また青森県の小川原湖でも過去に氷下曳網漁が実施されていたことが判明していることから、これらの場所の現地調査も視野に入れ研究を継続したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の調査対象は、過去の氷下曳網漁の主要実施地(八郎潟及び諏訪湖)の訪問と現地調査(漁具等の保存と実施経験の聞き取り)、並びに氷下漁実施地域(網走湖、能取湖)での現地調査の二つであったが、そのいずれも順調に実施することができた。特に実施地域の二つの湖での漁獲行為、さらに氷下曳網、待網、刺網の3種類の漁獲行為を参与観察できたことは主要な成果であるといえる。これらは映像(静止画、動画)記録も行い今後の研究分析用資料として、また研究成果公開用の資料としても活用することとしたい。(本年度は現地調査が年度末に集中したこともありDVD資料化に至らなかった) なお、環境文化論的研究という課題の中の、気候変動と漁獲行為ないし資源状態との関係についても本調査の課題としているが、本年度は過去の気候状況とこれらの活動との関連性についての分析には十分立ち入ることができなかった。来年度以降の課題としていきたい。また、漁獲物の販路や利用法、漁業者の本漁法への対応や意見、さらに観光資源としての利用法やその実績については十分な調査を実施するには至らなかった。これも今後の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
氷下漁の実施状況調査、特に環境の影響を調査分析するには複数年度において実施することが肝要である。そのため研究期間の3年間のうち冬季において現地調査を実施する当初計画を26年度以降も実施する。主要実施地は、網走湖及びその周辺であるが、諸情報により根室地区でも氷下(待網)漁が実施されていることが判明している。26年度冬季は、可能な限り根室地区も調査対象とすることを考えている。なお、根室地区での主要漁獲物はコマイであり、ワカサギを漁獲対象とする網走湖の氷下曳網漁とは違いがあり興味深い。 同時に、過去の氷下(曳網)漁の実施地として青森県の小川原湖もその一つであることが判明しており、その地の現地調査も実施することを考えている。 また気候状況と漁獲や漁業資源の状況についての関係性についても、専門家との意見交換等を通じ、探求していきたい。さらに、氷厚と漁獲行為との関係等は氷結環境研究者(寒冷地土木工学研究者等)などの専門家の知見や協力が必要である。この方面でも専門家の協力が得られるか否か、探求してみたい。(本研究の期間内が無理であれば、次期の研究課題のテーマとすることもあり得る)さらに地域経済や地域観光資源としての側面についても、現地行政関係者の意見も参考にしつつ分析していきたい。 26年度中には、それまでに得られた調査資料や情報をもとにした論文(特に歴史的経緯)を執筆することを目標としたい。また最終的な論文は27年度の研究期間終了後に総合的な内容の論文を執筆したい。 得られた/今後得られる映像資料(静止画、動画)の利用についても、研究用の他、調査地への調査資料還元(市民啓蒙用資料、博物館資料)に貢献したい。また、調査地において研究成果(あるいは研究の途中経過)を発表することを予定している(2015年2月頃)。また、27年度には千葉大学展示場における静止画の展示会(一般に公表可能)を行う予定。
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Research Products
(7 results)