2015 Fiscal Year Research-status Report
移住開拓島に構築される生業体系に関する民俗学的研究―定住化と無人島化の事例比較―
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25370940
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
野地 恒有 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (60242898)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 無人島化 / 移住 / 開拓 / 民俗学 / 海縁ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題に掲げた移住開拓島とは近代以降に移住者の開拓によってその集落が形成された島のことである。本研究計画は、移住開拓島を定住化・無人島化に分類して、移住後に構築される生業活動を「持続する生業体系」と「途絶する生業体系」とに対比させてとらえて、移住社会の生業活動について調査・研究を進めるものである。 今年度には、瀬戸内海地域以外の移住開拓島(開拓集落を含む)として、青森県むつ市大畑町、熊本県八代市、長崎県佐世保市池島において聞き取り・観察調査をおこなった。また、瀬戸内海地域としても広島県廿日市市や尾道市において聞き取り・観察調査をおこなった。このほか、それらの地域で文献情報収集をおこなった。そして、おもに前年度に方向性を得た「海縁ネットワーク」の検証を進めた。 これらの研究をとおして、移住開拓島に展開される生業が「持続する生業体系」となるか「途絶する生業体系」となるかをとらえるにあたり、海縁ネットワークの形成という観点が有効であることが深められた。つまり、(1)定住生活を持続させ安定させるのは、周辺社会との間に張りめぐらされた多様な海縁ネットワークによるものである、(2)移住先の定住生活を成立させる生業体系とは外部との関係で構築される海縁ネットワークの体系のことである、という結論が固められつつある。 さらに、こうして得られた「海縁ネットワーク」という考え方をもとに、柳田国男の「海上の道」論や折口信夫の「まれびと」論を再検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究目的は、移住開拓島研究においてこれまでの研究から提示された「海縁ネットワーク」の有効性を深めることであり、その目的は達することができた。また、瀬戸内海地域以外の移住開拓島に関する資料収集も進めることができた。そして、来年度(最終年度)に向けて一定の見通し(海縁ネットワーク社会の成立)を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下のとおりに推進する。20016年度は最終年度である。 1)定住に成功した移住開拓島とその周辺地域の補充調査をおこなう。 2)無人島化した移住開拓島とその周辺地域の補充調査をおこなう。 3)無人島化した移住開拓島と定住化に成功した移住開拓島を対比して、移住社会における定住生活の持続・途絶過程を比較研究する。そして、研究結果をまとめ、成果の公表を目指す。
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Causes of Carryover |
現地調査先の相手方(調査協力者)の都合により、計画していた調査が延期になったため。あわせて、その調査にかかわる物品費が残額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
移住開拓島(おもに香川県丸亀市・観音寺市と長崎県佐世保市)で約4回の現地調査(補充)をおこなうための旅費、現地調査及び研究をまとめるための物品費(パソコン周辺機器類やファイル類など)、成果報告用印刷費として使用する。
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Research Products
(2 results)