2016 Fiscal Year Research-status Report
西廻り航路を介して北海道に伝播した大祓の祭祀と伝承をめぐる諸問題の民俗学的研究
Project/Area Number |
25370961
|
Research Institution | Hokkaido Museum |
Principal Investigator |
舟山 直治 北海道博物館, 学芸部, 学芸部長 (90181445)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 民間信仰 / 夏越大祓 / 水無月祓 / 川裾祭 / 川下祭 / 川濯祭 / 祓戸の神 / 瀬織津姫命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、江戸時代の西廻り航路を介した地域間交流を背景に、本州以南から北海道へ伝播した大祓の信仰形態の変遷を明らかにするため、5ヶ年計画で大祓の祭祀と祭神の分布調査を進めてきた。 具体的には、北海道の日本海沿岸地域において、大祓の祭祀に関わる祓戸の神と、川下神、川裾神、川濯神などと呼称される祭神の関連性を考察するため、それぞれの神像、神徳、祭日と祭祀内容について調査している。一方、北海道で伝承されている祭祀との比較のため、伝播の母体となった地域と考えられる兵庫県や京都府など日本海沿岸部の河川流域における大祓の祭祀状況を調査し、これまでに1府3県の河川流域において調査を終えた。あわせて、河川流域の祭祀状況を分布図にまとめるとともに、日本海側と太平洋側の祭祀の特徴を整理した。 本年度は、兵庫県に接する鳥取県と岡山県東部の河川流域において、瀬織津姫命などの祓戸の神を祭神としている神社と、川下神、川裾神、川濯神を祭神としている神社について分布調査を進めた。特に、兵庫県西部では千種川と揖保川、鳥取県東部では千代川、岡山県東部では吉野川の計4河川の流域において調査を実施した。その結果、岡山県と鳥取県において川下神、川裾神、川濯神の神社祭祀を新たに補足し、祭祀状況を分布図に示すとともに、調査報告としてまとめた。さらに、住吉大社(大坂府)と八坂神社(京都府)の大祓について、それぞれの祭祀内容を記録するとともに、茅萱の活用方法など民俗知識について知見を得た。 また、北海道積丹郡積丹町では、過疎高齢社会の中で伝承している川下神の祭祀状況を継続して調査し、3班の輪番制による祭祀を定点的に収録した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、5ヶ年調査の中間年まで計画していながら未着手であった夏越大祓神事について、効率的に調査を進めるため住吉大社(大阪府)の荒和大祓と八坂神社(京都市)の夏越祭の2カ所の祭祀を選定し、研究協力体制を整えて祭祀調査と分布調査を実施した。分布調査は、岡山県と鳥取県東部の河川流域において、大祓の祭祀と関連する川下神、川裾神、川濯神の祭祀を新たに確認することができた。兵庫県では、千種川と揖保川流域における大祓の祭祀と川下神、川裾神、川濯神の祭祀について調査を実施したほか、加古川流域の住吉神社が関与する川下神の祭祀状況を記録し、未着手であった地域の調査が進んだ。 また、北海道内では、川下祭を定点的に記録している積丹郡積丹町など北海道内の調査も継続的に進められている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、本州以南から北海道へ伝播した大祓の信仰形態と、伝播の母体となった地域の分布調査を進め、それぞれの地域における祭祀の伝承について整理する。さらに、大祓の祭祀に関連する祓戸の神と、川下神、川裾神、川濯神などと呼称される祭神祭祀の地域的な特徴を抽出する。 また、北海道積丹郡積丹町周辺の川下祭の定点調査を継続し、過疎高齢化が進む余別地区の祭祀の伝承過程を記録する。あわせて、北海道と本州における川下神、川裾神、川濯神の祭祀を伝承している地域との比較をとおして、共同体における祭祀の伝承について課題を整理したいと考える。 今年度は、研究期間の最終年にあたることから、研究協力体制をさらに強化し、祭祀の分布と祭祀状況の調査を効率的に実施し、最終報告としてまとめる。
|
Causes of Carryover |
本年度は、研究協力体制を強化したことにより、これまで未着手であった住吉大社の荒和大祓と八坂神社の夏越祭の祭祀調査のほか、鳥取県と岡山県を中心に分布調査を進めることができた。しかしながら、当該年度に調査を予定していた滋賀県、福井県、石川県の分布調査と祭祀調査については着手することができず、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度においては、北海道内における定点調査を継続して進める。また、研究協力体制をさらに強化し、滋賀県、福井県、石川県における分布調査と夏越大祓の祭祀調査を分担して対応する。6月末から7月末に集中する夏越大祓の祭祀調査については、滋賀県の長浜市と高島市を中心に調査を実施し、比較資料としてデータを整理し、最終報告を行う。
|
Research Products
(1 results)