2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
直江 眞一 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10125619)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フォーテスキュー / 国制論 |
Research Abstract |
本年度は、J・フォーテスキューの国制論を内在的に理解する上で重要な彼の著作『イングランドの統治』(The Governance of England: The Difference between an Absolute and a Limited Monarchy: De Dominio Regale et Politico)を解読するための準備作業として、同書の写本および刊本の調査・検討を進めた。 写本については、すでにコピーの形で入手済みであったランべス写本(Lambeth 262)と8月にイングランドに出張した際に新たに写真撮影の形で入手したケンブリッジ大学図書館蔵の写本(Cambridge University Library Ll, III, 11)の比較検討を始めた。この他、英国図書館蔵の2写本(Cotton Claudius A VIIIとHarley 1757)も部分的に比較参照した。他方、刊本については、同じくケンブリッジ大学図書館蔵の初版(1714年)と立教大学図書館蔵の第2版(1719年)の「序文」「献呈の辞」等を比較検討した。 また、フォーテスキューの小作品『ランカスター家の権利の弁護』(Defensio Juris Domus Lancastriae)を解説付きで邦訳し、『法政研究』第80巻第4号に「資料」として掲載した。本作品は直接国制論に関係するものではなく、王位継承権について論じたものであるが、本作品からは、ヘンリ1世の死亡(1135年)後の王位継承時にすでに議会が存在していたとフォーテスキューが論じていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、第一に、「政治権力かつ王権に基づく統治」(dominium politicum et regale)というフォーテスキュー独自の国制論を15世紀後半イングランドの歴史的文脈において的確に位置付けることであり、また第二に、それが後代絶対王政期にいかなる意義を付与されたかを明らかにすることである。今年度は第一の目的を達成するために、『イングランドの統治』を刊本と残存写本の綿密な校合を踏まえて解読し、さらにフォーテスキューの国制論の思想的淵源を解明することを計画していたが、検討対象とすることのできた写本は3写本にとどまり、また思想的淵源の解明についても不十分であり、達成度は「やや遅れている」と評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、フォーテスキューの統治形態論の集大成と考えられる『イングランドの統治』の解読を進め、先行する著作である『自然法論』および『イングランド法の礼讃について』における議論と比較することによって、フォーテスキューの思考の展開過程を跡付ける。また、彼の国制論の思想的淵源を明らかにするために、トマス・アクィナスの『君公統治論』(De regimine principum)と比較する作業を進める。
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Research Products
(1 results)