2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380008
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
直江 眞一 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10125619)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フォーテスキュー / 国制論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「制限君主制論」あるいは「混合政体論」の基礎を提供する理論として注目されている15世紀イングランドの法律家ジョン・フォーテスキューの国制論(統治形態論)の歴史的位置を明らかにすることにある。本年度は、当初の実施計画によれば、彼の思考の展開過程を跡づけると共に、彼の国制論の思想的淵源を明らかにすることを具体的な課題としていた。このうち、重点的に研究を進めたのは、1215年に成立したマグナ・カルタとフォーテスキューの国制論の関係である。 マグナ・カルタは、後世(とくに17世紀以降)その「神話」化を通して、国王権力を制限すると共に、臣民の諸権利を保障し、法の支配を宣言した最初の文書と評価されるようになる。そうであるならば、フォーテスキューの国制論にも何らかの影響を与えているのではないかと推定されるところ、彼の諸著作を通観してみてもマグナ・カルタへの言及は一切見当たらない。この事実はどのように説明されるのか。この点については、従来、中世末にはマグナ・カルタは現実政治の世界から消えていたのだと指摘されてきた。確かに、ジョン王のマグナ・カルタ(1215年)は同年中に無効とされたが故に、フォーテスキューにとっても、その存在自体が知られていなかったということも考えられなくはない。しかし、注目されるのは、フォーテスキューの王位継承論との関係である。彼は、自らが仕えるランカスター朝の正統性を主張するために、一般論として、王が死去した場合には王の弟が王位を継承すべきことを論じている。しかるに、ジョン王は正にリチャード一世の弟として王位に就いたのであるから、そのような正当な権原をもつジョン王から獲得した文書であるマグナ・カルタに論究することは、むしろ自らの主張にとってマイナスになると考えたのではないか。これは仮説であって、さらに検証を要するが、本年度の研究のさしあたりの成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2015年はマグナ・カルタ成立800年にあたるため、我が国の法制史学会においても6月の総会で「マグナ・カルタの800年――マグナ・カルタ神話論を越えて――」と題するシンポジウムが開催されることとなり、本年度はじめに、研究代表者も報告をおこなうよう主催者から依頼された。その準備に相当の時間をとられたため、本研究の達成度は「やや遅れている」と評価せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はフォーテスキューの主著の1つである『イングランドの統治』について、残存写本および刊本を比較対照しながら、解読を進め、その独自の国制論の歴史的位置について一定程度の見通しを得るようにする。
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Research Products
(1 results)