2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
後藤 武秀 東洋大学, 法学部, 教授 (90186891)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 旧慣 / 植民地台湾 / 家族 / 妾 / 犯罪即決 / 笞刑 |
Research Abstract |
家族に関する慣習の中から、本年度は、妾を対象として検討を加えた。妾は、日本統治時期の台湾においては公認された身分であり、これが民事法適用上、いわゆる旧慣として尊重されるはずであった。しかし、一夫一妻制度を採用する日本内地の法に慣れ親しんだ裁判官にとっては、このような一夫多妻制度は倫理的に容認されるものではなかった。そこで、裁判官は、妾制度を否定はしないが、紳士たるものは慎むべきことであるとの見解を判決において示すようになった。同時に、妾からの離縁請求を幅広く認め、一夫一妻制度へ近づく道を開いていった。次に、本年度は、刑事慣習のなかから、笞刑を取り上げて検討を加えた。笞刑は、日本内地においては西洋近代法の導入に伴って廃止されていたが、台湾で採用され、さらには朝鮮においても採用されるようになった。もともと清朝時代においては制度化された刑罰の一種であったが、台湾に笞刑を実施することについては、日本内地との方の統一に反する、あるいは蛮刑であると行った批判があったが、台湾総督府はその効果を認めて、笞刑を実施した。それは判決による刑罰だけでなく、地方庁において主として警察官によって運用された即決制度においても用いられた。監獄の整備に費用が必要と行った統治当局の事情を優先してはじめられた制度であったが、台湾においては旧来笞刑が行われていたこともあって、軽罪に対して多数利用されることとなった。なお、朝鮮との比較も行い、即決制度における笞刑の使用実態は、台湾では比較的少なく、朝鮮ではかなり多いことも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家族に関する慣習のうち、妾に代表される日本統治時期台湾の一夫一妻制度が日本人裁判官の倫理観の影響を受けて徐々に変容していく状況を解明することができた。また、刑事慣習についても研究を広げ、笞刑の実際について解明することができた。これらは、旧慣の一部分を成すもであり、その解明によって家族に関する慣習の変容の全体像を描くことが可能となるからである。以上の理由により、本年度の研究予定はほぼ達成されたと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
大家族制の解体過程に現れる一夫多妻制度の否定、ひいては一夫一妻制度への傾斜に裁判官が果たす役割を総合的に検討することが具体的課題の一つである。前年度までに解明した妾の否定化が聘金と呼ばれる台湾伝統の金銭授受にどのように関係するかを検討する。すなわち、妾の離縁請求を寛大に容認することにより一夫多妻制度の否定へとつながるのであるが、その際に聘金の返還がどのように取り扱われたかを検討する。次に、大家族制を財産的にも祖先祭祀の側面からも維持している祭祀公業が、一夫一妻制度の否定化にともなってどのように変化しているかを見ていく。これにより総合的に大家族制の解体過程が解明される。
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Research Products
(6 results)