2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380012
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
後藤 武秀 東洋大学, 法学部, 教授 (90186891)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 台湾 / 慣習法 / 祭祀公業 / 妾 / 聘金 / 華人風俗習慣法典 |
Outline of Annual Research Achievements |
台湾における家族に関する慣習の変遷が、日本統治下において特に裁判所の判決を通じてどのように変遷していったかを研究することを目的とした。本年度は、昨年度までに収集した家族に関する判決文を分析することに作業の重点を置いた。婚姻、妾婚姻および養子縁組などの時に男家側から女家側に公布される聘金と呼ばれる金銭の授受について判決を収集し、その分析を行った。その成果の一端は、「台湾における聘金の慣習」と題して東洋通信51巻2号(平成26年6月)に掲載した。聘金の取り戻し訴訟など、婚姻ないしは準婚姻関係破綻時における聘金の取り扱いについてはいまだ研究成果を発表するに至っておらず、平成27年度にまとめる予定である。 他方、台湾における家族に関する慣習が伝統中国におけるそれとどのように相違するかについても研究を進めた。台湾は、福建省から移住した漢族によってその慣習が形成されたと考えられるが、台湾島内で独特の発展を下部分があると考えられるからである。特に、祭祀公業等の同族共存の財産秩序に関してその傾向がみられる。そこで、中国大陸、特に南方の周辺地域における慣習と台湾の慣習との差異を検証するために、香港、マカオの慣習について整理した。その成果の一端は、「近代マカオにおける西洋近代法と伝統中国法の調整―黎暁平・汪清陽『望洋法雨―全球化与澳門民商法的変遷』の紹介を通して―」アジア文化研究所研究年報49号(平成27年2月)に発表した。マカオにおいて華人に適用された1909年「華人風俗習慣法典」では、妾、聘金、祭祀公業について規定されておらず、これらの慣習が台湾島内において独自の発展を遂げていったことが推測される。この点の詳細については27年度に論文を発表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家族に関する慣習のうち、妾、聘金については、ほぼ研究を終えることができたが、聘金の多様な形態についてまで十分に判決の分析を終えたとは言えない。 祭祀公業については、膨大な量の判決が残されており、1921年の内地法延長主義以降の判決についてはその分析をすべて終えたわけではない。 台湾における家族に関する慣習の独特の発展については、研究推進上生まれてきた課題であり、本研究期間においては基本的な状況を整理するにとどまらざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、聘金の多様性について判決を基に分析を進める。従来、聘金は日本内地の結納金類似のものではあるが、しかしその金額の大きさから人身売買の身価金としての性格を有すると解されてきたが、庶民間ではそのような性格が認められるものの、社会的地位の高い人々の間ではそのような意識は存在しないことが慣習調査により明らかとなっている。聘金取り戻し訴訟の判決もまた、身価金という概念ではなく、結納金という観点から下されていることを立証していく。 祭祀公業については、1906年以降に編纂された祭祀公業令に対する当時の検察官の批判を検討しており、その成果は平成27年6月に公表される。内地法延長主義採用以降の判決についての分析を進めており、その成果は、平成27年度中に発表する予定である。 南中国の慣習との相違、すなわち台湾島内における独特の慣習の発展については、香港、マカオの慣習に関する研究を並行して進めながら、比較検討していく。
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Research Products
(3 results)