2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25380012
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
後藤 武秀 東洋大学, 法学部, 教授 (90186891)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 妾 / 台湾家族法 / 慣習法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、家族に関する問題を中心として判決をもとに慣習の変更を実証的に検討することを課題とした。本年度の作業は、第1に基本資料の復刻であり、第2に妾という台湾特有の制度に関する研究論文の作成である。 基本資料の復刻についてみると、資料調査の過程で、台湾総督府財務局が編集した家族に関する判例集が台湾に残されていることを発見し、その復刻を行った。その成果は、東洋法学59巻3号に公表した。 次に、本年度の研究対象として妾を取り上げた。妾は、日本統治下の日本内地では容認されていない制度であるが、台湾では慣習的にその存在が公認され、いわば制度的保障を与えられた存在であった。台湾で妾が認められていたのは、男子による祖先祭祀の継続こそが家の存立を左右する重大事であると意識されており、正規の妻に男子がない場合に第2夫人ともいうべき妾を招き、男子の出生を求めることが行われた。妾は、男家の家長の同意のもとに男家に入り、正規の妻に準じる法的存在であった。このように、妾は家の存続に深く関係する制度であったがゆえに、日本統治時代の最後まで制度的に否定されることはなかった。しかし、日本人の裁判官から見ると、妾は決して倫理的に好ましい存在ではなかった。そこで、裁判の場で、その存在を否定する判決を下すことは困難であったが、妾の離縁請求を容認する方向性を採用することにより、一夫一妻制の社会慣行を作り上げようとした。すなわち、慣習上、妻あるいは妾からの離縁請求は、特段の自由がある場合にのみ認められていたのを、妾に限っては、理由のいかんを問わず離縁の意思があればこれを認めるという判決を下した。これについては、日本法政学会シンポジウム(台湾中山大学)で口頭報告を行い、その概要をアジア文化研究所研究年報50号に発表した。
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Research Products
(4 results)