2013 Fiscal Year Research-status Report
緊急事態における法と裁判官の役割に関する憲法理論的研究
Project/Area Number |
25380034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
愛敬 浩二 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10293490)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 憲法 / 比較憲法 / 立憲主義 / 緊急事態 |
Research Abstract |
「緊急事態における法と裁判官の役割」という問題に関わる、〈9.11〉以後の英米憲法理論における議論状況の調査・分析を行うことが本研究の課題である。その初年度に当たる平成25年度は主に次の二つの研究活動を行った。 (1)裁判官の令状による拷問制度の導入という提言(Alan Dershowitz)が、アメリカ合衆国の識者の間でシリアスに受け止められたこと、そして、拷問禁止緩和問題との関係で「Legality」の観念の重要性が議論されるようになったこと、以上の二点に注目して、主にアメリカ憲法学の理論動向を文献的に調査・検討した。その成果の一部を、「都市防災研究協議会(政策)第5回研究会」(2013年12月19日、京都大学東京オフィス会議室)で報告する機会を得た。 (2)裁判による人権保障の普遍化(=法的立憲主義の主流化)という問題を、〈9.11〉後の憲法学の議論状況を踏まえて検討するため、主にイギリス憲法学の理論動向を調査・分析した。具体的には、①英米憲法学において注目されているJeremy Waldronの違憲審査制批判の議論の意義と問題点を検証した。また、②Martin LoughlinのPublic Law論を分析して、彼の問題提起は、裁判官の視点を特権化する憲法理論の下でイギリス憲法が「法的立憲主義」へと転換していくことの問題性を明らかにするものとして理解すると、その意義が理解できることを明らかにした。①の成果は年度内に論文として公刊した。②の成果は近日中に公刊の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度当初の計画では、米国での調査を前提として、①アメリカ憲法学における拷問禁止論議とLegalityの観念の調査・研究を先行させる予定であったが、9月にキングズ・カレッジ・ロンドンでの研究報告の機会を得たため、②イギリス憲法学の調査・研究を並行して行うことにした。その結果として、①の調査・研究は計画どおりに進展しなかったが、②の研究は計画よりも順調に進展しており、年度内に論文を公刊できたばかりでなく、調査・研究の成果を踏まえて、2014年2月に渡英して、現地の研究者(Martin Loughlin教授やK.D. Ewing教授など)と有意義な意見交換を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策としては、第一に、アメリカ憲法学を主な素材としつつ、「緊急事態における裁判官の役割」という観点から、Legalityの観念の意義と問題点の調査・検討を行う。また、〈9.11〉以降の英米憲法学においてなお、「裁判所による人権保障」という考え方を批判する一連の議論を調査・分析して、緊急事態における裁判官は「法の支配の担い手」になりうるのかという問題を検討する。 研究を遂行する上での課題としては、第一に、前年度に先行して行ったイギリス憲法学の調査・研究の成果を論文等のかたちでなるべく早く公刊すること、第二に、Legalityの観念に関する憲法理論的・法哲学的研究を加速することである。
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Research Products
(5 results)