2015 Fiscal Year Annual Research Report
自由貿易体制の進展に対応する国内行政法理論の構築:公益事業と社会保障を中心として
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25380039
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
原田 大樹 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (90404029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入江 秀晃 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50600029)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公益事業規制 / 電力構造改革 / 原子力政策 / 投資協定仲裁 / 政策実現過程のグローバル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる今年度は,投資協定仲裁と多層的な裁判制度の調整の問題を取り上げ,ドイツ法を素材とする比較法研究を行った。 ドイツでは,2009年と2012年に起こった2つのVattenfall事件が投資協定仲裁の具体例としてしばしば言及されている。これらはいずれもエネルギー分野(公益事業)に関連するものであり,ドイツ国内の行政裁判制度と,ヨーロッパレベルでのエネルギー憲章条約に基づく国際投資仲裁との調整や,投資仲裁制度の問題点が議論されている。 特に,脱原発政策をめぐる2012年のVattenfall事件は,連邦憲法裁判所の判断が出されることが予定されており,これと国際投資仲裁の仲裁判断の関係がどのように整理されるべきかが論じられている。それと同時に,EUとアメリカとのTTIP交渉では,国際投資仲裁が大きな争点となり,EU側は常設の仲裁裁判所の設置を提案している。 また,多層的な裁判制度に関しては,欧州中央銀行のいわゆるOMT決定をめぐるドイツの連邦憲法裁判所と欧州司法裁判所との調整が,ドイツでは広く議論されている。選挙権を梃子とする憲法裁判所のコントロール余地確保の試みは欧州司法裁判所によって阻まれており,今後の展開とこれに対する学説からの反応を引き続き注視する必要がある。 これらの問題に対応する日本法のフィールドとしては,取消訴訟における和解の許容性の問題や,国家賠償と損失補償の関係,損失補償の要否の基準を挙げることができる。現状では日本においてまだ具体的問題が発生しているわけではないものの,TPP協定の締結で国際投資仲裁と国内の行政訴訟・国家賠償との調整は現実問題として表面化する可能性が高まっている。
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Research Products
(17 results)