2014 Fiscal Year Research-status Report
被告人の言語使用に対する各裁判所の訴訟指揮権行使の理由・範囲
Project/Area Number |
25380050
|
Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
榎澤 幸広 名古屋学院大学, 経済学部, 講師 (80536277)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 訴訟指揮権 / 法廷通訳 / 外国人 / 手話 / 方言 / 裁判傍聴 |
Outline of Annual Research Achievements |
法廷通訳事件に関係した弁護士、通訳者、関係者(札幌、秋田、東京、金沢、名古屋、大阪、岡山、広島、松江、博多、宮崎、沖縄)から、被告人の言語使用や通訳人付与について話を伺った。また、これらの地域の裁判所(名古屋、金沢、松江、博多を除く)と京都・横浜の裁判所にて裁判傍聴も行い、各裁判所における言語に関する訴訟指揮権行使の傾向を検討した。 本研究をスタートする時の問題意識は、各裁判所毎に言語に関する訴訟指揮権行使がどのように異なるかであったが、現在のところ、各裁判所毎に違いはほとんどないと考えられる。但し、例えば、外国人事件を日常茶飯事扱う都市圏(東京、大阪、横浜)とそうでない地方圏を比較すると、通訳人数、通訳人の確保の仕方、通訳人同士の交流、裁判官が外国人や通訳人への対応になれていることなどに差が見受けられた。これは聴覚障害者の事例に数多くふれている地域の手話通訳(どちらかといえば都市圏。例えば、名古屋)とそうでない地域の手話通訳でも、同様の違いが見受けられる。 また、法廷での方言使用については、都市圏と地方圏という区分ではなく、地域毎に異なった。都市圏であっても、大阪・京都では法廷内で方言が飛び交うし、東京や神奈川でもすべて標準語というわけではない。検察官が方言使用する一方で被告人が標準語というケースもある。被告人が方言使用した場合、裁判官が聞き返したり、弁護士が補足を加える場合もあるが、そのまま進行しているケースもある(この点は、外国人事件も同様)。 以上が聞き取り調査や傍聴の結果導出された結論であるが、より正確なデータを導出するために引き続き同様の調査を行う必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、高裁地域の裁判所における言語に関する訴訟指揮権行使の傾向を検討し終える予定であった。 そこで、進行具合であるが、仙台、名古屋、金沢、松江、高松、博多の高裁地域で裁判傍聴を行うことはできなかった。ただ、法廷通訳に関わった関係者から直接話を聞いたり、手紙でやりとりをしたりはできた。他の高裁地域では、関係者から話を聞くこともでき、裁判傍聴も行うことができた。 従って、部分的なデータの地域もあるが、一応のところ、予定地域での調査は行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も研究手法は変わらないが、裁判傍聴する地域は広げるし、既に調査した場所も再訪する(当初の今後の予定地は外国人が多い関東や東海圏の予定であった)。 というのも、法廷での方言使用のケースは東北に多いため、青森や秋田の裁判所で傍聴した上での分析が必要になる。また、外国人通訳事件は、都市部の裁判所に多いため(東京や大阪)、既に調査を行ったが、より正確なデータを集めるために再調査する。
|
Causes of Carryover |
理由は三点ある。 第一に、調査訪問予定であった金沢、高松、仙台、松江に行けなかったこと。第二に、当初の調査予定地であった裁判所調査を行うことができなくなり、初年度(平成25年度)の計画変更が遅れたため、初年度の調査があまり実施できなかったこともある。第三に、当初は聞き取り調査時に録音した内容はテープ起こし会社に依頼する予定であり、その予算もこの中に入っていたが、個人情報などもその内容には含まれているため、万が一の漏えいを避けるためにこれらのことは止め、すべて調査費やコピー費に変更したことにもよる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
関東圏の裁判所(裁判傍聴)と関係者への聞き取りと名古屋、金沢、高松、仙台、松江、東北圏(青森や秋田)の裁判所での裁判傍聴。
|