2015 Fiscal Year Annual Research Report
人々の意識における刑法の役割と刑罰動機に関する研究
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25380088
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
松原 英世 愛媛大学, 法文学部, 教授 (40372726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 英生 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (30508669)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 刑事政策 / 刑法の役割 / 刑罰動機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人々が刑法に対して何を期待し(刑法の役割)、刑罰をどのような理由で用いたいと考えているのか(刑罰動機)、そして、それらに対してどのような要因が影響を及ぼしているのか、また、それらが現実の政策にどのように関係しているのかを、犯罪や犯罪者に対する一般の人々の反応に焦点を当てながら、質問紙調査を用いて実証的に明らかにすることを試みた。 最終年度は、昨年度末に実施した本調査の結果を分析し、そこで得た知見の一部について学会報告を行った(①Matsubara Hideyo & HIdeo Okamoto「The Relationship between Our View of Criminal Punishment and the Penal Policy」Asian Criminological Society 7th Annual Conference(2015/06/26)、②松原英世・岡本英生「人々は刑罰をどのように使いたいと思っているのか?それは刑事政策とどのように関係しているのか?」日本犯罪社会学会(2015/11/21))。そこで明らかにしたことは次のとおりである。①人々の主たる刑罰動機は、規範の伝達、応報感情の充足、懲らしめ、国家権力の顕示であった。②人々の意識の中で刑事政策は、「人権の尊重・制約」と「応報・予防」の2つの軸で認識されていた。③刑罰動機として規範の伝達を重視する者、懲らしめを重視する者ほど、監視・重罰化を目指した政策を支持していた。 目下、これらの報告内容を論文にまとめるとともに、それ以外の分析(パーソナリティ要因や価値観、犯罪・社会状況の認識と刑罰動機・刑事政策との関係)を続けている。本研究は、民意(人々の認識・期待)と刑事政策のダイナミックな関係を考察するものであり、刑事司法が変革の時代を迎えている現在の日本においてその意義は小さくないものと思われる。なお、本調査は全国の20~69歳の男女3000人を対象に多岐にわたるデータを収集しており、それ自体大きな価値を有するものであることを補足しておきたい。
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