2014 Fiscal Year Research-status Report
日韓民法の連続性と固有性に関する研究-日韓の法調和と学術交流の実質化に向けて
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25380111
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
中川 敏宏 専修大学, 法学部, 教授 (50364237)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 韓国民法 / 法の継受 / 固有法 / 法定地上権 / 契 / 模合 / 民法改正 / 代償請求権 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,日本法と韓国法の共通の基盤である土地建物別個法制がもたらす問題として,法定地上権制度にかかわる問題を取り上げた。法定地上権制度は,抵当権実行による所有者の分裂という局面に対して,日本民法・韓国民法ともに同じ規律を有しているが,そのような局面以外で,土地の所有者と建物の所有者とが分裂する場合については,日本法であれば,特別法による立法的解決が図られているのに対して,韓国法であれば,広範囲な適用領域をもつ「慣習上の法定地上権」法理という判例理論が発展している。この判例理論は,わが国の法定地上権論が射程としない,当事者の意思により所有者が分裂する局面までカバーしている点で特徴があるが,その広範囲な適用領域ゆえ,さまざまな問題点が指摘されており,現在進行中の韓国民法改正作業においても,それらの問題点を解決すべく大いに議論されている。以上の問題について考察を行い,論文を執筆し,すでに校正を終え,次年度5月末に刊行予定である。 また,日韓の法の継受の様相を考察するため,その考察対象として,韓国で今日でも残る庶民金融機能をもつ慣習としての「契」を取り上げ,韓国での調査を行った。また,そのような庶民金融は,今日のわが国ではほとんどみられないが,沖縄では,「模合」という金融方式が今日でも活発に利用されている。この極めて類似した慣習的な制度について,比較研究をすべく,沖縄で調査を行い,あわせて「模合」について研究する当地の研究者へのヒアリング等を実施した。 さらに,次年度に続く研究として,代償請求権に関する問題の考察を開始している。日本民法・韓国民法いずれにおいても代償請求権に関する規律がないが,現在進行中の民法改正作業において,規律の新設が議論されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究成果の一部については,すでに円谷峻教授古稀記念論文集(2015年5月末刊行予定,成文堂)に論文を寄稿済みであり,またその研究成果については,2015年4月25日の第228回国際取引法研究会において報告を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
韓国の「契」については,日本の植民地支配の過程においてなされた慣習調査などを分析しつつ,その固有性を明らかにする。また,「契」をめぐる現代的なトラブルについて調査を行い,沖縄における「模合」ないし「模合崩れ」との比較研究を行う。 日本韓国で進行中の民法改正作業において,一つの焦点とされている代償請求権規定の新設をめぐる議論状況を比較研究し,代償請求権についての議論の蓄積のあるドイツ法等の状況について考察を進める予定である。
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Causes of Carryover |
予定していたドイツでの調査を実施できなかった。それを補う形でドイツ文献の資料収集・購入を行ったが,不完全に終わった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ドイツ法文献の収集が不十分であるので,本年度は重点的にドイツ法文献の収集に努め,日本・韓国・ドイツの3国間法比較をおこなう。また,韓国法制の固有性に対する研究資料として,『朝鮮高等法院判決録』(全31巻,68万円)の一部を可能な限りで入手する予定でいる。
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