2014 Fiscal Year Research-status Report
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約」批准における日本法の対応
Project/Area Number |
25380124
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
山口 亮子 京都産業大学, 法学部, 教授 (50293444)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ハーグ子奪取条約 / relocation / 子の監護権 / 親権 / アメリカ家族法 / 子の奪い合い紛争 / custody / child abduction |
Outline of Annual Research Achievements |
ハーグ子奪取条約を理解するに当たって、本年度は、(1)国内の子の奪取事件をめぐる立法解釈と裁判例の動向を精査すること、(2)日本法はもとより親権・監護権に関する各国の法制度を理解すること、(3)諸外国における子の監護権と親による子奪取防止の法整備を研究する必要があったが、これら全てに関し研究し、6つの論文を執筆して公表した。 (1)については、日本国内の子の奪い合い事件発生の背景として、日本法には別居時の手続きが存せず、社会的な男女性別役割分担の傾向により、母親による養育が主として行われている現状を明らかにし、法制度としては、子の奪取時の法手続は整備されているものの、裁判所では主たる養育者による転居は、同意がなくても違法な奪取とは判断されにくいこと、しかし、子の意思を中心に親子の交流が継続することが子の利益であることが理解されており、判例法も面会交流を促進していることを検討し、日本国内において今後、家族に対する行政や司法の支援の必要性を主張した。 (2)については、アメリカの共同監護法制度の進展の中で、実務における共同監護と面会交流の強力な推進、一方の親が子を連れて転居することの法的制限、ドメスティック・バイオレンス(DV)支援や養育費の義務づけ等による、家族に対する行政の公的サービスの充実等をまとめた。 (3)に関しては、アメリカにおいて別居後および離婚後に子と暮らす監護権者が子を連れて転居することを制限する“relocation”の法制度を検討し、実務上の無断転居の制限と親による転居の合意、判例法上において、監護権者の転居を正当化できる証明責任の内容とその証明要件の変遷、立法上のrelocation認容の考慮要件、DVと子連れ転居に対する政策、等について明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に研究する内容として想定していた、(1)国内の子の奪取事件をめぐる立法解釈と裁判例の動向を精査すること、(2)日本法はもとより親権・監護権に関する各国の制度の理解、(3)諸外国における子の監護権と親による子奪取防止の法整備を研究することに関しては、ほぼ達成できた。比較法としてはアメリカ合衆国の研究および論文発表を行い、その他諸外国の状況については、それぞれの研究会・研究グループにおける議論を通して制度についての理解に努めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
各国でハーグ条約をどのように解釈し、適用し、子をどのように返還しているのか、また、判例に現れる問題点はいかなるものなのかについて、特にアメリカの実務と判例について研究する。具体的には、アメリカ国務省の方針と政策、アメリカ判例法に現れる解釈に関する検討を行い、また、子が国外へ連れ出されて他方親と交流が途絶えた場合に子が被る精神的被害の状況、再統合の際に子の心理的ケアを誰がどのように行うのかについて研究を深めたい。
|
Causes of Carryover |
2014年9月末より半年間、本務校から在外研究の許可を得てアメリカ・フロリダ大学において科研費課題研究を継続して行ったにも拘わらず、その間、調査研究費を科研費から支出することが制度上不可能であったため、若干次年度へ持ち越しとなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度使用予定であった洋書の購入と、アメリカ調査研究として、使用する計画である。
|
Research Products
(8 results)