2015 Fiscal Year Annual Research Report
代表関係理解の刷新を通じた現代デモクラシー構想の拡充
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25380143
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
空井 護 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (10242067)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 現代デモクラシー / 政治的代表 / 政治的自己決定 / 間接性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終年度にあたる平成27年度は,前年度に引き続き政治的決定の本質をめぐって考察を進めた。その結果,①政治体制の如何を問わず,政治的決定の産物である政策とは,端的に政府を形成・維持・整形し,政府に行為や認識を命じる指令であり,②そうである以上,政策の名宛人たる政府を構成しない一般の政治的市民が政策に直接拘束されることはなく,③そのため政治的決定をめぐっては,非政府一般政治的市民に関して「自己決定」を原理上語り得ないとの結論に達した。そこで,かかる理解を全面的に展開する論文を日本政治学会研究大会で発表し,さらに折しも寄稿を求められていた単行本論文集に寄せる形で広く世に問うた。 現代デモクラシーとは,政治的市民に関して,政治的決定における間接性と,その産物たる政策の引き受けにおける間接性との,二つの間接性を同時に生み出すような政治体制であり,その下にある政治的市民においては一種の「間接性の均衡」が実現するというのが同論文の主旨である。たしかにかかる知見は,政治的決定局面での代表関係理解の操作によって確保する政治的自己決定性をテコに現代デモクラシーを規範化するという,本研究の基本方略の限界を指し示す(政治的自己決定性の真の回復には,政策の引き受け手である政府の構成方法もあわせて考慮する必要がある)。しかしこの知見は,「間接性の均衡」を崩す点において,古典デモクラシーが現代デモクラシーに対して欠如態的ステイタスを備えることも含意する。古典デモクラシーから現代デモクラシーに対して強力な非正統化圧力がかかる今日,その圧力を軽減するロジックの析出は,後者の正統化という点でそれなりに意義ある成果と考える。また,政治的決定理解を彫琢するなかで着想を得,年度内に脱・入稿したJ・A・シュムペーターのデモクラシー理解の歪みを指摘する論文は,本研究課題遂行上の予期せざる副産物であった。
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Research Products
(3 results)