2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380198
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
藤井 篤 香川大学, 法学部, 教授 (90222257)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルジェリア / 植民地主義 / 帝国主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルジェリア戦争期の反植民地主義勢力の活動・役割を追求するために、当初の予定をやや変更して、オランダ、フランス、アルジェリアで史料調査を行った。オランダ・アムステルダムの国際社会史研究所IISG所蔵の社会主義インターナショナル文書のなかから、アルジェリア戦争に関する資料を閲読した。ソ連共産主義勢力とは一線を画しつつも、社会主義インターナショナルはこの戦争の本格化・長期化を懸念しており、フランス政府に対して停戦への圧力を強めていたことを確認した。 またフランス・パリでは国家文書館、外務省文書館、社会主義研究大学局OURSなどで史料調査を行った。フランス共産党のM.Thorez、フランス社会党のJ.Begarraら指導者の個人文書を調査し、フランス左翼政党の状況認識・党内状況を探り、また民族解放勢力FLNの国際次元での反植民地主義活動の実態を解明した。 2013年夏にアルジェリア国家文書館で民族解放勢力の臨時共和国政府GPRAの文書を調査し、その調査報告を「民族解放戦線側から見たアルジェリア戦争」『日仏歴史学会会報』第29号(2014年)として発表した。さらに2013年の調査では調べきれなかったGPRA文書の追加調査を行った。フランス社会党が極秘で試みた停戦交渉にアルジェリアの民族解放勢力がどのように対応したかを調べようとしたのだが、残念ながら民族解放戦線側の当該文書の存在を突き止めたものの、閲覧を拒否された。それでも民族解放戦線が冷戦体制の下で、共産主義勢力には距離を置きつつも、1960年ころには路線転換を行い、社会主義陣営への接近を始めたことを文書によって確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フランス共産党指導者のThorez文書はアルジェリア問題に関する部分は貧弱であり、内務省(警察)文書を調査したが、党機関紙など公式のメディアを通じて得られる情報以上の知見を得ることは困難であった。そこで社会党や社会主義インターナショナル文書など、隣接勢力の文書を通じて共産党の反植民地主義行動を探ろうとした。 また民族解放戦線の文書を通じても、同様に共産党との関係を追求したが、2013年と同様に、アルジェリア国家文書館の官僚主義的非能率により、文書の閲覧許可がスムーズには下りず、また一部重要文書は閲覧を拒否されるなどした。これらの結果、当初の研究予定が十分に達成できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度内に研究成果を公刊することを考え、研究計画の一部変更を行う。当初、2015年度にはフランス在住のアルジェリア人労働者たちのナショナル・アイデンティティの形成について論文を発表するとしていたが、これまでの研究蓄積を考え、アルジェリアからの引揚者のアイデンティティや政治的要求について研究を論文化する。フランス共産党の反植民地主義行動や、アルジェリア問題をめぐるソ連共産党との関係については、さらに調査・研究が必要であり、2016年度の論文化を目指す。
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Causes of Carryover |
洋書購入のために物品費をより多く残したいと思い、旅費を実際の支出よりも圧縮した。ただし洋書の発注・納品の時期が大きく遅れたこともあり、当該年度に物品費を支出しきれなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度分の物品費と合わせて、アルジェリア戦争に関する洋書を購入に充当する予定である。夏休みまでに洋書を発注する。
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Research Products
(1 results)