2016 Fiscal Year Research-status Report
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25380212
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
安江 則子 立命館大学, 政策科学部, 教授 (20268147)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | EU(欧州連合) / Brexit / 難民問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
テーマに関して研究を進める中で、中間的な成果として、以下のような学会報告および司会・討論を行った。 ・2016年10月8日に開催されたグローバル・ガバナンス学会(於:大阪大学)において、「Brexitの帰結 EUとグローバル社会へのインパクト」と題する研究報告を行った。この報告において、EU離脱交渉の焦点について分析するとともに、EUの対外政策や域内政治に対するインパクトについて政治原則との関連において分析を行った。 ・2016年11月19日に開催された東アジア共同体学会(於:立命館大学茨木キャンパス)において、「Brexitと欧州エネルギー安全保障」と題する研究報告を行った。この報告では、EUおよび英国のシンクタンクで公表された資料を分析し、EUおよび英国のエネルギー政策、また、エネルギーに関連する対外政策やパリ協定における合意内容の実施などが、Brexitによってどのような影響を受けることになるのかについて考察した。 ・2016年11月26日に開催された日本EU学会(於:一橋大学)において、英語セッション(共通論題)「Area of Freedom, Security and Justice-Refugees, Terrorism and the EU」の司会と討論を行った。EUが直面する難民問題への対応について、欧州からの招待研究者の基調報告の後、法律、政治、経済の各分野の報告者とともにその課題を議論し、今後の展開について意見を交換した。難民問題への対応や国境政策は、EUの政治理念を問われる重要な事例であり、研究交流によって知見を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね順調に進展している。ただし、申請者の研究対象であるEUは、難民問題に加え、2016年にはBrexit(英国のEU離脱)が決まるなど、地域統合の大きな分岐点に差しかかっている。EUが統合の理念的基盤として掲げてきた政治原則についても、EUレベルや加盟国内において、根本的な議論が行われており、その動向は予断を許さない。EU市民の域内自由移動の原則や、シェンゲン協定に基づく国境管理については新たな問題が発生し、また欧州におけるテロの多発は、これまでのEUおよび加盟国の第三国移民政策にも大きな影響を与えている。さらに2017年春には、フランス大統領選が実施され、その結果が欧州統合の将来にとってBrexit以上に重大な帰結をもたらす。 こうした状況に照らして、従来から収集し検証してきた文献や資料に加えて、新たな動向を踏まえた現状認識とその分析が求められている。そのため、4年間の予定であった研究期間を1年延長して、新たな状況に即した分析が行えるよう研究を継続することが必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
EUをめぐる新たな動向、とりわけ英国メイ首相とEUとの間で行われるBrexitの交渉経緯、そして加盟国内のポピュリズム政党の躍進、そうした中で実施されるフランス大統領選挙、ドイツ議会選挙などの動向を注視していく。そしてEUが基盤とする様々な政治原則が、こうした動向によって変更を迫られていくのか、その具体的な影響について政治原則が問題となる事例を含めて検証を進めていく。加盟国の動向が、EUの制度的基盤や政治理念・原則に及ぼすインパクトを注意深く考察する必要がある。 また中東やアフリカ地域からの難民をめぐるEUと加盟国の対応を検証する。特に、シェンゲン協定による国境検問の廃止をめぐる議論の展開を追い、また一部の国による国境検問の復活がどの程度長期化するのか検証する。「国境なき欧州」を目指してきたEUにとって、大きな試練となった多量の難民問題の解決において、EUがこれまで重視してきた人道主義はポピュリズムの下で修正を迫られるのか、欧州の研究者との交流を通して分析していく予定である。
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Causes of Carryover |
研究対象であるEU(欧州連合)においては、難民の大量流入によるポピュリズムの台頭やBrexit(英国のEU離脱)問題など、地域統合の根幹にかかわる重要な事象が発生している。それにともなって、当初の研究計画、研究の方向性にも修正が必要となった。新たな動向について分析のための資料収集、研究交流による状況把握が求められる。 そのため、研究年度内に拙速に結論をまとめるよりも、Brexitによる離脱交渉の経過や、EU内の国境管理問題の議論の行方、フランスやドイツといった主要国で行われる選挙の争点や結果、その分析などを十分に検証することが望ましいと判断した。 EUが統合の要としてきた「EU市民の自由移動」や国境なき欧州といった基本理念、また、人権を掲げた規範力による外交などが、どのような課題に直面し、どのような変更を迫られているのか、入念に考察し研究結果をまとめたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Brexit(英国のEU離脱)、フランスの大統領選挙などを素材とした加盟国のポピュリズムの動向、テロや国境管理政策に関する書籍、資料などを購入し読み進める。インターネットを通じた海外研究機関のHPを通じた資料収集を行うため、関連備品や消耗品の購入が必要となる。 また、国内・国外のシンポジウムや研究会に参加して情報収集や研究者間の意見交換を行っていく。また研究成果について英語論文の公表や、その海外発信のために翻訳補助を依頼することを予定している。
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