2015 Fiscal Year Annual Research Report
スミスにおける共感と自己保存の原理の学史的再構成:経済学の進化心理学的基礎
Project/Area Number |
25380258
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
高 哲男 九州産業大学, 経済・ビジネス研究科, 教授 (90106790)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アダム・スミス / 共感 / 効用 / 道徳 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.アダム・スミスの「共感」の捉え方は、D.ヒュームのような物理学的・力学的なものではなく、動物行動学や進化心理学的なもので、いわば現代の「心の理論」に近いものであること、また、スミスの「効用」の理解は、身体的な「効用」と「装置の美や統一性」という機械的なものとを明確に区別したものであり、両者を連続したものとしてとらえると、個人の効用と社会の効用とを区別できず、「体系的統一性」を重視するシンプルな体系となってしまうという批判に裏打ちされたものであったことを、『道徳感情論』の大部を中心に再構成し、論文にまとめて発表した。
2.D.ヒュームからの批判を受け、スミスは『道徳感情論』の第二版以降「共感」概念に関する脚注を追加するが、その間の事情をG.エリオットあての手紙と、それに添えらえていた「追加・補正」の原稿を精査し、第二版における第三章の追加と変更、さらに第6版での大幅な追加について、図式化しながら考察し、全体としては「変更というよりも、説明不足であった点を追加した」とみるべきであること、さらにNLSやエジンバラ大学図書館での調査によりわかってきたスミスの音楽観を追加し、論文で発表した。
3.進化論的経済学の方法を明確にするため、ヴェブレンの『有閑階級の理論』に論文「経済学はなぜ進化論的科学でないのか」を訳出・増補追加したうえで、全体をさらに読みやすく手直しして、出版した。
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