2013 Fiscal Year Research-status Report
初期近代イギリスにおける信用の制度化をめぐる議論とその論争点
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25380259
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ohtsuki City College |
Principal Investigator |
伊藤 誠一郎 大月短期大学, その他部局等, 教授 (20255582)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 信用 / イングランド / 17世紀 |
Research Abstract |
(1)本研究やそれにいたるまでに行ってきた、17世紀イングランドの金融システムの確立に向けた諸議論に関する研究を、それら全体を通ずるテーマ、「基金」や「担保」の位置づけを中心にまとめ、平成25年5月の経済学史学会において、「17世紀イングランドにおける信用と基金」というタイトルで報告し、これを論文としてまとめた(平成26年度中に共著の一部として刊行予定)。(2)1695年のイングランドの国立土地銀行企画をめぐる論争の一部をまとめた論考'What was the issue in the land-bank controversy?'を5月にロンドンで開催されたヨーロッパ経済思想史学会で報告。(3)20年にオーストラリアで報告した'Interest controversy in its context'の改訂版を、英語校閲の後The Historical Journalに投稿。その後、同誌から、本稿に不足する点を指摘され、それがいずれも私自身が他の論考で論じていることだったため、本研究の方向を検討し、今後は、各論文の学術誌への投稿よりも、それらをまとめて著作とするように計画を調整した。ロンドンでの学会の際、出版社と相談し、また、その後のメールのやり取りを通じて、英文での著書の刊行へ向けた手続きについて情報を収集した。(4)10月に社会思想史学会で「イングランドはオランダからなにを学ぼうとしたか? 」という報告を行った。この原稿の準備段階で見つけた、オランダとイングランドの漁業、とくにニシン漁の促進がいかに経済に重要かをめぐる多くの17世紀の著作を、夏季休暇におけるロンドンでの資料調査において収集し、その後調査、分析を続け、平成26年度のヨーロッパとオーストラリアの学会での報告にむけて準備をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成二十五年度初めに計画していたとおり、17世紀イングランドの金融システムの確立に向けた諸議論に関する私自身のこれまでの研究を、「基金」や「担保」に焦点をあててまとめた「17世紀イングランドにおける信用と基金」を経済学史学会で報告し、これもそのご論文としてまとめ、平成26年度中に刊行予定となり、1695年のイングランドの国立土地銀行企画をめぐる論争の一部をまとめた論考'What was the issue in the land-bank controversy?'もヨーロッパ経済思想史学会で報告できた。17世紀の利子論争を扱った'Interest controversy in its context'は、The Historical Journalに投稿後、リジェクとされたが、レフェリーや編者からのコメントから、今後の方針について考えさせられるヒントを得られた。また、当初予定しなかった社会思想史学会での「イングランドはおらんだからなにを学ぼうとしたか? 」という報告により、これまでも課題であった、17世紀イングランドにとってのモデル国オランダが、どのような意味においてモデル国であったのかについて、さらに掘り下げる機会を得た。また、夏には、計画通りロンドンでの一次資料の収集をすることができ、その後の研究に役立った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、当初の目的どおり、17世紀のイングランドの金融システムの成立過程において、当時の人々がどのようにそのシステムに内在する不安定性を克服しようとしていったかを調べていく。また、その焦点は、(1)ニシン漁を中心とするオランダの利点、および、その他全体としてのオランダ経済モデルの取り入れ、(2)本研究の主テーマに関わる部分で、まだ未着手の土地銀行論争の後半の部分、の二点を中心にしぼっていく。また、今後は、基本的には日本内外の学会発表にむけて原稿を作りながら、そのあとは、これまでのように英文学術雑誌への投稿を目指すのではなく、これまでの論文をまとめて、英文著作としてまとめるようにしていく。そのために、平成26年度中に、現在計画している部分をできるだけ仕上げ、できる限り年度内に出版にむけたプロポーザルを作成し、出版社との交渉に向けた準備を始めていきたい。おおまかな準備については、すでに25年度に英国の出版社の担当者より説明をうけているので、それに従う形で進めていきたい。
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