2014 Fiscal Year Research-status Report
アジア太平洋地域の環境物品の貿易構造と貿易自由化効果の実証分析
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25380319
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Research Institution | Tokyo International University |
Principal Investigator |
松村 敦子 東京国際大学, 経済学部, 教授 (60209608)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 環境関連物品貿易 / APEC / 日本アセアン自由貿易協定 / グラヴィティ・モデル / 生産工程フラグメンテーション / 部品貿易 / 産業内貿易 / 世界貿易機関 |
Outline of Annual Research Achievements |
「アジア太平洋地域の環境物品の貿易構造と貿易自由化効果の実証分析」という研究テーマにおいて、平成25年度には「日本の環境物品貿易構造」とその要因について明らかにした。平成26年度には、平成25年度からの継続研究として、「我が国の環境物品貿易の構造と相手地域別特徴:産業内貿易とFTA効果を含むグラヴィティ分析」というタイトルのもとに、日本の二国間貿易を対象としたグラヴィティ分析を完成させることから始めた。5月にこの論文が完成した後にはこれを発展させ、世界の環境物品貿易の構造を明らかにするために、さまざまな地域における40カ国以上の統計を用いて、生産工程フラグメンテーションに伴う中間財貿易比率とアジア太平洋地域効果を含むグラヴィティ・モデルに基づく計量分析を行った。 この研究を行うに当たり、平成26年5月までに先行研究のサーベイを行い、これに基づいて理論的基礎構築と仮説設定を行い、その後8月末までに計量分析のためのデータ整理とコンピュータを用いた分析のための作業を繰り返し行い、フラグメンテーション効果とアジア太平洋地域の効果について、良好な結果を得ることができた。グラヴィティ分析においては3,562の観測数のパネルデータを用いた計量分析により、精度の高い分析を行うことができた。 その成果は、「アジア太平洋地域における環境物品貿易:地域効果、フラグメンテーション効果に焦点を当てて」というタイトルの論文にまとめ、10月の日本国際経済学会全国大会で報告し高い評価を受けた。その後この研究を英語に翻訳し、”Trade of Environmental Goods and Regional Trade Integration”というタイトルのもとに英文雑誌への投稿を試みている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「アジア太平洋地域の環境物品貿易構造と貿易自由化効果の実証分析」というテーマにおいて、平成25年度においては、環境物品とは何かについての考察を行った上で、日本の環境物品貿易構造とその決定要因について明らかにし、さらにグラヴィティ・モデルに基づく計量分析を行うことにより産業内貿易の効果とFTA効果について詳しい分析を行った。 平成26年度においては、平成25年度の日本を中心とした分析を、世界40カ国以上のデータを用いた分析に拡張し、研究テーマの対象となっているアジア太平洋地域の特徴を明確化することを試みた。世界の環境物品貿易のデータを用いることによってアジア太平洋地域、日本アセアン自由貿易地域といった地域効果を明らかにすることができ、一方で環境物品貿易の決定要因としてのフラグメンテーション効果について実証することに成功した。 以上の事実により、研究期間の半分の二年間において、テーマの半分、つまり「アジア太平洋地域の環境物品の貿易構造に関する研究」について詳しい分析を行うことによってしっかりと成果をあげることができた。 これまで行ってきた研究において計量的に良好な結果を導くことができ、今後研究を発展させるための土台を築くことができた。すでに研究成果を英文にまとめて英文雑誌への投稿を試みており、今後はいずれかの英文雑誌への掲載に漕ぎつける目途が立っていることも重要な成果と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
4年間の研究期間の3年目を迎えた今年度以降の研究については、4年間を通じた研究テーマとして掲げている課題のうちの後半部分に比重をおいていくことになる。つまり、「アジア太平洋地域における環境物品貿易における貿易自由化効果の分析」ということになる。 こうした研究についての推進方策としては、まずは関税引下げによる貿易自由化の効果の分析を進めていきたい。世界各国の関税データはHS6桁分類において定められており、こうしたHS分類による個別の環境物品の分析を行っていきたいと考えている。 すでに、太陽光パネルの関税のデータをWTOのホームページから入手して整理済みである。また各国における太陽光パネルの貿易データについてはHS8桁以降の詳細なデータを用いて整理しており、今後はこうしたデータを基にして、関税引下げによる貿易自由化分析に適した分析手法を前提として理論的基礎を固めることから始めていきたい。 貿易費用としての関税に効果の分析は、太陽光パネルのような重要な環境物品の貿易拡大をもたらした要因として非常に大きな重要性を持っていると考える。過去の統計データをもとにして、貿易自由化による効果が生じた可能性のある時期を対象として選び、その効果の実証分析を行っていきたい。貿易自由化効果がタイムラグを伴って生じている可能性や効果が長期間にわたって生じている可能性を考慮し、比較的長い期間をとって分析を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたことについては、当該年度のデータ分析を完成させるための必要経費の一部が残ったことが原因であるが、その理由としては、分析対象国数の拡張を次年度の分析において行うこととしたためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においてはこれまで分析対象として含めなかった国を新たに分析に取り込むことを計画しているため、新たに分析に追加する国の貿易データ配信費用として使用する計画である。
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