2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380358
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
水落 正明 南山大学, 総合政策学部, 准教授 (50432034)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高年齢者雇用 / 新規学卒者の就業 / 若壮年層の賃金 / 置換効果 / 雇用政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、2つのテーマについてデータ分析を行った。第1に、「就業構造基本統計調査」(平成24年調査)の個票情報を使って、高年齢者雇用が若壮年層の雇用に与える影響を分析した結果、以下のことがわかった。①就業者に占める60歳以上比率の上昇は、新規学卒者が正規職に就く確率を引き下げる。ただし、性別や学歴によって効果は異なっており、さらなる分析の必要がある。これまでの研究では、こうした代替効果の存在は確定的でなかったが、本研究は存在することの一つのエビデンスとなった。②高年齢者の雇用確保によって新規学卒者が初職として正規職に就けなかった場合、その後(調査時点)の賃金が減少することがわかった。性別、学歴、勤続年数、従業上の地位などの影響をコントロールしても約12%程度の賃金減少が生じていることが確認された。こうした効果も研究蓄積が少なく、雇用政策を考える上で重要な資料になると考える。なお、この成果は2015年3月に東京大学社会科学研究所で開催された二次分析研究報告会で発表したほか、2015年11月にワシントンDCで行われる” The 2015 Aging and Society Conference”での報告が採択されている。第2に、パネルデータ(全国家族調査パネルスタディ2009-2013)を利用して、定年退職が高年齢者の精神的健康に与える影響について分析を行い、負の影響を与えていることを明らかにした。さらにその影響は、定年退職から2年経過した後でラグを伴って出現することを確認した。定年退職の精神的健康への影響に関する厳密な分析は、これまでにほとんどなく、研究蓄積の一助となったと考える。この成果については、2014年6月にプダペストで行われたEuropean Population Conference 2014で報告を行ったほか、2015年秋に刊行予定の書籍に所収される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画からは、使用するデータを変更したが(「労働力調査」から「就業構造基本調査」へ)、データ分析は順調に進行している。「研究実績の概要」に記したように、これまで不十分であった研究蓄積に信頼性の高い成果を加えることができたと考えている。また、国内での研究発表を経て、国外での研究成果報告にも採択されており、成果の公表という点でも最終年度を前に順調に進んでいる。先進国の中でも特に急速に高齢化する日本の現状について国際会議で報告できることは、学術的にも実社会的にも重要な意義を持つものであると考える。また、関連して行っている高年齢者の雇用と健康の研究も順調に進んでおり、国際学会での報告を経て、和文ではあるが書籍に所収される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね順調に進んでおり、最終年度は主に成果報告および、政策的インプリケーションの導出に力を入れていく。最終年度は、国際会議(2015年11月)で報告することが決まっており、さらに国内の学会・研究会へもエントリーし、さらなる研究のブラッシュアップに努める。また、こうした研究成果をもとに、今後の日本において、高年齢者と若壮年の雇用の関係がどのように変化していくのかについて、シミュレーション分析などを通して、長期的な政策展望を導き出していく計画である。なお、本研究は単独研究であるが、全国家族調査パネルスタディ研究会に引き続き所属し、高年齢者の雇用に関する研究成果を報告していくほか、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センターの共同研究班にも引き続き参加することで、本研究課題進展の助けとしていきたい。
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Causes of Carryover |
国際学会のエントリーにおいてフルペーパーではなくアブストラクトだけで済んだため、英文校正費が残る形となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度はフルペーパーによる投稿を行うため、それの費用にあてる計画である。
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Research Products
(2 results)