2013 Fiscal Year Research-status Report
ダイナミック階層ファクター・モデルによる為替レートの変動と伝播効果の解明
Project/Area Number |
25380386
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
永易 淳 筑波大学, システム情報系, 准教授 (30375422)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 外国為替市場 / 実質実効為替レート / ダイナミック階層ファクターモデル / ベイズ統計 |
Research Abstract |
最先端の統計手法を用い、実質実効為替レートの伝播効果の規模を明らかにし、その変動を経済的に分析することが目的である。実質実効為替レートは、各国の経済競争力を示す変数として考えられているため、多くの開放経済理論で用いられている。しかし、実証研究では殆ど用いられていないのが現状である。世界の外国為替市場は密に関連しているため、実質実効為替レートに相関の存在を予想することは容易であるが、伝播効果のレベルを数値化した先行研究は存在しない。 研究の第一段階として、ダイナミック階層ファクター・モデルを用い、世界各国の実質実効為替レートの変動を4 次元のレベル1) 世界共通ファクター、2)所得レベル階層ファクター、3)地域レベル階層ファクター、4)国別特有ファクター、に分解し、各階層の規模を分散分解法で比較することにより他国への依存度を数値化する。この手法は近年Moench et al(2011)により開発され、高次元の階層にデータを分類し各階層の共通要素を推定することを可能とする。第2段階として、マクロ経済統計データを用い、上記階層(1~3)内共通要素の変動要因を明らかにする。経済統計データは各国の政府や中央銀行が開示している金利やマネー・ストック等、また民間企業が作成している株価インデックスや金融恐怖指数等を用いる予定。共通要素の説明変数を明らかにすることにより、統計的に有意な第3国および変動要因を特定する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1年目は主に、研究の方向性の決定および研究環境を整える下準備を行った。具体的には研究応募書に従い下記の点に取り組んだ。 独自性の確立:国家間の貿易規制が撤廃され世界の経済市場が統合していく中、一国の経済低迷がもたらす他国への影響(伝播効果)の重要性は以前にも増して重要視されている。アジア通貨危機(1997)、リーマン・ショック(2008)や欧州債務危機(2009)等の事例からも分かるように、海外の金融危機は取り分け情報通信技術で密接に関連している外国為替市場(例 円レート)に多大な影響を及ぼした。近年、より多くの研究が行われた背景がここにある。これらの研究と差別化するためにも、1年目は過去の研究を概観し本研究の方向性を定めた。既に学術雑誌に掲載された研究論文を理解することも重要であるが、日本経済学会や日本金融学会などの研究会に参加し多くの研究者と交流を深めることで、最新情報を収集し研究テーマの理解を深めることに努めた。また、英国の大学に約3週間滞在し、特に技術的な部分(統計手法)の理解を深めた。 研究の下準備:本研究は多くの国々の統計データを取り扱うことが一つの特徴である。そのために必要な、コンピュータや解析ソフト等を購入した。実質実効為替レートのデータを分析できる形式に変換するなど、データ・ベースの構築作業のためリサーチ・アシスタントとして雇用した。 研究の達成度:ダイナミック階層ファクター・モデルの推定に必要なコンピュータ・コードを完成させ実験的に解析を行った。完成度は低いが、研究結果は日本経済学会で発表し、数々の有意義なコメントを頂いた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は3年間で完了予定のため、今後の研究は次のように行う予定である。 研究2年目は、学会や研究会での発表をとおし、この初期的な実証結果の課題点を明らかにし、研究の改善に努める。現在の潜在的問題として、ダイナミック階層ファクター・モデルの推定に必要な仮定(例、階層を形成するグループの定義)の妥当性が挙げられる。推定前に階層の決定は不可欠で、本研究では主に各国の地理的位置の情報によりグループが形成されている。そのため、最終結果がこの仮定にどれ程影響されるのか吟味する必要がある。また、為替レート以外のデータの収集をリサーチ・アシスタントとともに遂行し、伝播効果の変動の解明に努める。また、この分野の統計手法は毎年のように改良されているため、ダイナミック階層ファクター・モデルの発展を常時理解するため、この分野の最先端の教授が在籍している英国大学に1カ月程出張する予定。 研究最終年度は研究を論文として完成させ、研究結果を広く開示することに努める。学会や研究会での報告は勿論のこと、研究論文は世界的に認知されている査読付き学術雑誌に投稿する。また、研究を随時改善し、Discussion Paperやインターネットのホームページで研究結果を開示することも最終年度の重要な業務となる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究一年目の予算による研究活動は予定通り行った。つまり、予定全額使用した。しかし海外出張が3月だったため、この出張費は本書類の会計支出(費目別収支状況等)には含まれていない。 上記のように、この残高は3月の海外出張で使用済み。
|
Research Products
(2 results)