2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380391
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
清水 克俊 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80292746)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 銀行 / 信用リスク / 自己資本比率規制 / バーゼル / 預金保険 |
Research Abstract |
バーゼルII において新たに導入された、信用リスクの計測における内部格付け手法を取り上げて、新規制が金融機関に与えた影響を検討した。バーゼルII 規制においてもっとも重視されたことは、金融機関みずからがリスク管理を適切に行い、また、それが反映されるような規制体系を作ることであったといえる。このような観点からは、内部格付け手法の導入が信用リスク・エクスポジャーの低下につながったか否か、内部格付け手法を導入した銀行とそうではない銀行の競争力に違いが生じたか否か、今後のバーゼルIII において、自己資本比率基準の引き上げなどがどのような影響をもつかが問題となる。こうした点について、計量経済学的な手法に基づいて分析・検討を行った。 具体的には、内部格付け手法の導入は金融機関の信用リスク・ウェイトを引き下げたという仮説を検証するため、リスク加重資産について部分調整モデル方程式を推計した。その結果、内部格付け手法は有意にリスク加重資産を減少させることが確認された。これは、信用リスク評価に標準的手法を用いた場合と、内部格付け手法を用いた場合のリスク・ウェイトに統計的に有意な差がみられることを示す。推定方法は、アレラノ=ボンドの一般化モーメント法によるパネル推定である。これは、リスク加重資産などの内生性を考慮するためである。 また、同時に、自己資本比率の分子と分母の調整速度の推計も行った。調整速度の推計値はモデルに依存するが、おおむね、分母であるリスク加重資産の調整速度は分子である規制資本または自己資本比率自体よりも遅いことが示された。 まとめると、日本の銀行はバーゼルIIの導入以後、やや時間をかけながら、自己資本比率の分母を中心に自己資本比率の維持に努めてきたが、一部の銀行は内部格付け手法を取り入れることによって、より高い自己資本比率を実現してきたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
途中で推計方法の変更を行ったため、やや遅れが出たが、おおむね当初の予想通りの推定結果をえることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、リスク加重資産の部分調整モデルに、証券保有比率を導入し、推定結果の改善を試みる。マーケットでは、ローンと比べ相対的に、ポートフォリオの変更を速やかに行うことができるため、より精緻な推定結果がえられることが期待される。特に、証券保有比率がリスク加重資産を低下させるという仮説を検証する。 また、自己資本比率の分子である資本の増資についてもデータを収集し、分析の対象に加えることを考える。特に、増資を行う確率モデルを推定し、自己資本比率の低い銀行が、バーゼル規制の強化にあわせて、増資をおこなったという仮説を考える。
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